毎日の診療の中で、腎移植外来を訪れた慢性腎臓病患者さんはかなり腎移植に対して誤解していることが分かります。本コラムではそれらを紹介するとともに、正しい理解をしていただきたく、正解をご紹介致します。今回は血液型の話です。
そもそも腎移植に対する患者さんの漫然とした理解は、“なるべく提供者と合っていなくてはならない”ということです。何が合っていなくてはならないと理解されているのでしょうか。
その1つはHLAと呼ばれるいわゆる細胞表面に存在するヒト白血球抗原といわれるもので、個々人を標識する目印のようなものです(これに関しては次回また解説します)。
次に血液型(ABO血液型)です。確かにかつての腎移植では血液型は一致しなくてはなりませんでした。これを理解するために左の画像をごらん下さい。ヒトの赤血球の表面にはA型あるいはB型が発現しております。これらの発現の組み合わせで血液型は決定します。つまりA型のみを発現している方は、A型。B型のみを発現している方はB型、両者とも発現している方をAB型と言います。一方両者とも発現していない方をO型と言います。“オー型”と言っておりますが、そもそもは両者とも持たないゼロ型という意味でした。
ご存知のかたも多いとは思いますが、輸血するときはO型のヒトの血液はどの血液型の人にも輸血が可能です。一方、AB型の人はだれからでも輸血を受けることが出来ます。
さて、腎移植はどうでしょうか?
図の赤血球を腎臓に置き換えてみて下されば結構です。つまり、O型の方の腎臓はどの型の患者さんにも問題なく移植できます(O型からA型、B型、AB型どなたにでも移植可能です)。一方輸血と同じように、AB型のヒトはどの血液型の腎も受け入れることが可能です(A型、あるいはB型、あるいはO型からAB型への腎移植は常に問題なくできます)。
このように、血液型が一致していなくても輸血の可能な組み合わせであれば腎移植は通常どうり可能です。
さらに、最近では本来輸血が不可能な組み合わせ(A型からB型、B型からA型、AB型からA型、B型、O型など)であっても、移植前に特殊な処置を施すことで、腎移植が可能となり、その成績も非常に良くなっています。
つまり、現在では血液型については、どんな組み合わせでも腎移植が可能ということです。
血液型が違っている血液型不適合移植については次回触れたいと思います。