トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  「手術後の健康維持(生体腎ドナー編)」腎移植に対する患者さんの誤解その23

原田 浩先生 コラム

皆さん、ご無沙汰しています。北海道はいつもより早い春を予感させる比較的暖かい3月を迎えました。

前回はドナーになる方の手術前の準備についてお話しさせていただきました。今回は、ドナーの方には提供後もずっと長生きしていただきたく、ドナーの健康維持についてお話しさせていただきたいと思います。

前回の「腎移植の準備(生体腎ドナー編)」で、「ドナーは、レシピエントとは比べようもないくらいに、乗り越えなければならない高いハードルがあります。なぜならば、健康な人にメスを入れ、1つの腎臓を頂き、手術時は当然のこと、その後の身体の安全も保障してあげなければならないからです。」とお伝えしました(*1)。その中でも、移植直後(腎提供直後)には、GFRは半分になってしまうことを力説しました。
実際は腎臓には余力がありますので、必ずしも半分になるわけではないのですが、現実的には35~40%程度、GFRが減少します。すなわち、腎臓が2つあった時のGFRが80ml/min/1.73m2であったドナーさんは、腎提供後は45~50ml/min/1.73m2となってしまいます(2,3)。単純にCKD診療ガイドライン(1)に当てはめますと、提供後の方は、CKD G3aとなる方がほとんどです。もっとも、ドナーさんは健康体ですので、腎臓が2つあるにも関わらず、何らかの腎臓の病気でGFRが低下している方と同等に考える訳にはいかないのですが、一応そうなります。

eGFR

いずれにせよ、腎提供前よりはGFRが減少していることは疑いのない事実ですので、提供後は、提供前よりもさらに節制して肥満、メタボリックシンドローム、高血圧、脂質異常症、糖尿病にならないように努力していかなくてはならないのです。
なぜなら上記の因子は、すべて腎障害の危険因子であることが明らかだからです(1)。よって、提供のためのガイドラインをクリアするために頑張ってダイエットされた方、禁酒、禁煙された方、その習慣はぜひ提供後も忘れずに続けていってください。むしろ提供後こそ、より頑張っていただきたいと思います。それが長生き、末期腎不全に至らないコツです。こんな事を今さらお伝えするのも、腎提供後に太ってしまわれる方が多いからです(図1)

肥満


よくお聞きになっている話かもしれませんが、小生が例えによく出すのは、車の話です。もともと、1,200ccのエンジン(例えば58kW)を積んでいたコンパクトカーですが、そのエンジンを軽自動車の660cc(例えば36kW)に換えてみてください。馬力が全てではないのですが、同じような走りをするためには相当アクセルを踏み込まなければならないはずです。結局は、エンジンが早く傷むということに繋がります(図2)

エンジン


腎臓も、大きな体で血圧の高い人のネットリとした血液を漉すという毎日が続くと、最初は糸球体というオシッコを作る工場はとりあえず大きくなり、あたかも何も無かったように取り繕いますが、やがて疲労から、壊れてタンパクが尿に漏れ出し、糸球体は潰れ出し、生き残った糸球体はさらに頑張り、それらも破綻し、腎障害が進むということになります。
肝臓と異なり、腎臓の糸球体は生まれた時にその数が決まっていて、再生はしないのです。大事にしてください。腎提供後に少し気が緩んでしまったドナーの方、提供前のことを思い出し、より一層の健康管理に努めてください。


文献
1. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018
2.「腎機能の共通言語:GFR」 腎移植に対する患者さんの誤解 その11
3. 「生体腎ドナーの提供後の腎機能」腎移植に対すス患者さんの誤解 その12


 

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