Chapter5 今後の取組みとメッセージ
現在、腎移植の啓発のために、どのような活動をされていますか。
上木原先生:
さまざまなところで講演を行っています。
豊田先生:
上木原先生が熊本県透析施設協議会の会長をされていたときに、協議会共催の勉強会として、移植の講演会を主催したこともあります。私たちの現在の取組み内容を発表すると、皆さん興味津々で聞いていらっしゃいましたね。
そのような活動は本当に大切ですね。今後はさらにどのような取り組みを行っていく予定ですか。
上木原先生:
現在、熊本市内は医療連携が取れていますが、県内のそれ以外の地域ではまだできていませんので、今後は熊本県のどこにいても、市内と同じように治療選択ができるような状態にしたいと思っています。
豊田先生:
自分が診ている患者さんが腎移植を受けて元気になるなど、目の前で患者さんの変化が体感できないと、内科医が移植の良さを実感するのはなかなか難しいと思います。現在は、内科医が参加する移植の勉強会というと、講演や症例検討会のようなものがほとんどですので、もう少し研修や実習のような形で移植医療を経験できる場ができるといいと思っています。少なくとも、当院の研修医の先生たちには皆、腎移植患者さんに接してもらう機会を設けています。
山永先生:
私は、当院でしっかりとした腎移植を行う体制が出来上がったので、今後は献腎移植の啓発活動と、移植を行う外科医の教育に注力したいと思っています。
海外留学(現在、カリフォルニア大学サンフランシスコ校移植外科に留学中)時に感じた、献腎移植に関する日本とアメリカの文化的背景の違いなども踏まえ、日本人にとって受け入れられやすい啓発活動を行いたいです。また、先日の地震によって、私たち医療関係者は腎移植が震災に強い医療だということを改めて感じました。透析患者さんが大変だったということは皆さん知っていますが、腎移植者は大丈夫だったということは実はあまり知られていないと思います。そのため、これまで以上に移植医療の素晴らしさを正しく伝えていきたいと思っています。
加えて、外科医の教育にも力を入れていきたいです。当院の外科は症例数もとても多く、外科医としての基礎をしっかりと作ることができますし、何より腎移植も経験できます。腎移植に関しては内科の体制も整っていますし、HLA検査室も立ち上がるなど、院内の体制もこれからますます整備が進んで行くところです。このような勢いがある病院で、腎移植医療に携わる外科医を一人でも多く育てていきたいと思っています。
最後に、現在腎不全治療を行っている患者さんや、今後腎移植を検討している患者さんにメッセージをいただけますか。
豊田先生:
腎機能が悪化していくにつれ、さまざまな不安や、これ以上悪くなりたくない、というようないろいろな気持ちが出てくると思います。私たちはそのような方たちに、次のステップとしての治療法を正確にお伝えし、意思の決定をサポートしながら、一番いい治療法を選んでもらいたいと思っています。
上木原先生:
現在、血液透析も、例えば長時間透析やオーバーナイト透析など、さまざまな手法が出てきています。いろいろな治療のオプションがありますが、そのような情報をすべて得られる医療機関は多くないと思います。さまざまな情報を平等に患者さんにお伝えしながら、腎不全治療は進歩しているということを伝えていきたいと思っています。
末期腎不全治療について知りたい方、移植を検討されている方やそのご家族は、安心して相談に来てください。