本邦の腎移植チームのロールモデルとなっている名古屋第二赤十字病院 移植内科・移植外科。
2017年4月に日本初となる移植内科を開設し、移植内科部長として日々、数多くの移植前後の患者さんの診察を行っている後藤先生に、移植内科の取組みや、CKD治療のあるべき姿についてお聞きしました。
Chapter1 患者さんと共に腎不全ライフを考える
貴院は全国でもトップクラスの腎移植件数を誇る施設ですが、患者さんはどのようにして腎移植という選択肢を知り、受診されるのでしょうか。
当院では、移植内科の開設以前から、より多くのCKD患者さんが腎移植の機会を得られるよう、腎臓内科や透析病院などの連携病院との関係構築に尽力してきました。連携病院に定期的に移植医療の現状をお伝えし、患者さんをご紹介いただいた場合には、移植手術後、患者さんがどのように回復され、現在はどのような状態なのかを丁寧にフィードバックするようにしています。
また、地域における腎移植勉強会を定期的に実施し、連携病院以外のCKD患者さんが移植の情報を得られる機会を作るようにしています。
その他、当院の腎移植チームのスタッフが現在の腎移植医療について分かりやすく解説した
『腎移植 あなたの疑問にすべて答えます2018』
の出版などを通じて、CKD患者さんに広く移植医療への窓口を開くための取組みを行っています。
そのような取組みを何年も継続して行った結果、当院を受診するCKD患者さんが増え、結果として腎移植を受ける患者さんも増えています。
そのような取組みを継続してこられた背景には、どのような想いがあるのでしょうか。
私は、「1人の患者もシャントを作らせない」という強い気持ちでこの医療に取り組んでいます。当院を受診された未透析の患者さんが、可能な限り透析を経ることなく移植を受けられるように、患者さんやドナー候補の方以外の理由、例えば手術枠や、検査のスケジュールの問題などで、予定通りに移植手術ができなくなるようなことが無いよう、日々、各科の医師や医療スタッフと密な連携を取っています。そのような取組みにより、現在の当院の先行的腎移植の割合は50%を超えています。
腎移植の相談に来られた患者さんには、最初の面談でどのようなお話をされるのですか。
まずレシピエント移植コーディネーターが患者さんの状況や疑問などをお聞きします。その後、移植内科医が1時間くらいかけて、腎移植だけでなく、血液透析、腹膜透析を含めたすべての腎代替療法について説明します。
末期腎不全に至ってしまった場合、患者さんの年齢にもよりますが、どれか1つの治療法だけで寿命まで生きられるとは限りません。その後の人生で、腎移植、血液透析、腹膜透析をどのような順番で受け、治療をしていくのか。患者さんとそのご家族に、個々のライフプランに合わせたCKD治療のタイムテーブルについて説明することは非常に重要です。患者さんの治療内容を点ではなく、将来を見据えた線で説明し、理解していただくのです。
例えば、生体腎移植について説明する場合は、「今回、移植を受けた場合、約〇年後には移植腎が機能しなくなり、透析再導入が必要となります。2回目の移植をする場合には、ドナー候補としては〇〇さんを検討することになります…」というところまで全部お話しするようにしています。私は、移植の説明の際に透析再導入の話を避けるということは、移植についてしっかりと説明できていないことだと考えています。
実際、患者さんやそのご家族にそのようなお話をすると、非常にすっきりとした表情をされる方が多いです。腎不全となってしまった患者さんやそのご家族は、この先がどうなるのかが知りたいのです。
最初の面談で再導入の話まですることによって、患者さんは今後の見通しが立てやすくなるのですね。
そうですね。実際、最初にそのような説明をして、その後も、何回もコミュニケーションを取りながら、患者さんとそのご家族との信頼関係を築くようにしていますので、移植後、透析再導入になった患者さんも、1年に1回はドナーの方と一緒に当科を受診されています。診察の際には、再導入後、心臓の状態があまり良くないようであれば、心臓の負担を軽くするために、長時間透析で評判が良い病院を紹介するなど、その患者さんに応じた対応をしています。
私は再導入した患者さんであっても必要があれば診るのが移植医だと思っています。移植手術をする外科医がそこまで対応するのは難しいと思いますので、そのようなフォローアップは内科医が行えばよいと考えています。その点、当院の腎移植チームは役割分担ができており、非常に良い形で機能していると思います。