息子との笑顔の再会
そして、いよいよ移植手術の日を迎えるわけですが、手術の前には息子さんと何かお話をされましたか。
千保さん:
毎日一緒にいるので、手術前だからといって特別に話はしませんでしたね。
無事手術を終えられた後、手術の傷の痛みはどのくらいの期間続きましたか。
千保さん:
おそらく、痛み止めの薬を細い管で体内に入れ続けてもらっていたからだと思いますが、傷の痛みは、問題になるほどではありませんでした。それよりも、6時間ほどの摘出手術中、右向きに寝ていたことから、下になっていた右肩から背中にかけての痛みがあり、その痛みの方が苦痛でした。
手術後、痛み以外で、困ったことやつらかったことはありましたか。
千保さん:
何も思い出せません。病院では、息子が6階、私が9階に入院していたのですが、手術が終わってから2日目に、1階の売店で待ち合わせをして会いました。「やあやあ、どうした、元気か?」と言って息子に会えた時は、ちょっとうれしかったですね。息子が、「手術が終わってから1日で、4~5リットルくらい、どーっと尿が出た」という話をしていたのを覚えています。
手術の際はどのくらいの期間入院しましたか。また、退院後はいつごろから日常生活に復帰されましたか。
千保さん:
手術の2日くらい前に入院したと思います。術後5日目に退院し、その2日後に抜糸するとの話でしたが、自宅から病院が遠かったこともあり、退院して2日後に再び病院に行くのは面倒でしたので、そのまま病院に7日間居て、抜糸した当日に退院しました。退院した日には、夕方から地元で、私が主催する送別会が開催されることになっていたため、一旦自宅へ寄りましたが、すぐに送別会会場へ赴き、約3時間居て、それから帰宅しました。会場には私が一番最後まで残っていましたね(笑)。
退院の日からすごいですね(笑)。
千保さん:
私はもともとストレスを全く感じないので、手術に関しても、苦痛で大変だったという思いがあまりないのです。ストレスがないので、夜寝られないということもなく、家に居るときにはお酒も1滴も飲みません。若い時から、お酒は外でしか飲まないですね。でも、お客さんがうちへ来てくれれば、お客さんに負けないだけ飲んじゃいます(笑)。新潟の酒屋が、季節が変わるたびに新しいお酒を送ってくれるので、私の家にたくさんお酒があることは有名で、皆さん飲みに来るのです。
手術中も特に苦痛を感じることなく、手術後も非常にお元気でいらっしゃるのですね。もちろん、もともと、とても健康体でいらっしゃいますものね。
千保さん:
そうなのですよ。本当は、「もう少し気を付けなくてはいけないのかな」とも思いますが、もともと健康だったので、術後もそのままのつもりで、何も生活を変えていません。
市長の仕事はとてもお忙しいと思うのですが、入院中はお仕事に支障はなかったのでしょうか。
千保さん:
海外出張していれば2週間くらい居ないですからね(笑)。助役や副市長はそのためにいるので、1週間や10日くらいは、市長が居なくても役所の仕事は回ります。市長は決断をするときに必要なだけで、日常業務は居なくても大丈夫なのです。市長の一番の仕事は、政策を決定し、その責任を取ることです。その決定をするときに、市長の一番の価値が発揮されなくてはいけないのでね。
私はものすごく決裁が速いのです。1~2秒でハンコを押して書類を渡すのですよ。気になるものがあるときだけ、「今のちょっと待ってくれ」と言って戻すのです。それが数百件の中に1~3件くらいあって、一人になってからもう一度見るわけですね、そうすると、「ここが問題」「あそこが問題」と出てくるのです。
市長のようなお仕事をされていてもドナーになれるということですね。
千保さん:
ええ、全く問題ありません。
2リットルの水分補給
臓器提供後、ドナー外来以外で入院や通院はありましたか。
千保さん:
最近になって胆石があることが分かり、時々CT検査を受け経過観察をしていることくらいで、特に余病はありません。「暴飲暴食が特技」などと冗談を言いながらの生活です(笑)。
臓器提供後、体調面で良くなったことや、改善したことはありますか。
千保さん:
本来なら、「腎臓が1つになったのだから」ということで節制するなどの心構えをすれば、改善することも期待できるのでしょうが、私の場合は恥ずかしながら全く変化がありません。
臓器提供後、特に気を付けてきたことはありますか。
千保さん:
水を飲む量が増えました。もともと水を多く飲む方でしたし、水を飲むのが好きでしたので、移植後は1日に約2リットル、ゴルフを1日中プレーするときは2.5~3リットルくらい飲むことがあります。体が水を求めているようで、大量に飲むことについては何ら負担に感じません。
生ビールだったら、大ジョッキで5~6杯も飲んだりしますね。あとは、日本酒の冷酒を飲むことが多いのですが、いつも
水を一緒にたくさん飲みます。
チェイサー用のお水ですね。
千保さん:
チェイサーなんていう、格好いいものじゃないですよ(笑)。いつもお酒を飲むときには冗談で、「バケツか何かで水を持ってきてくれ」と言うのです。
私が水を大量に飲むことは有名なので、飲み屋で私が飲み始めると、必ず水がドンと来るのです。酒を5合飲んだら、水は8合~1升近くは飲みますね。ですので、私は二日酔いというのが全くありません。飲んだ次の日も、きちんと普通に役所の仕事に行きました。みんなからは、「昨夜あんなにお酒を飲んだのに、なんで市長は今朝もこんなに元気なの?」って言われていましたけれど(笑)。
水をたくさん飲むこと以外にも気を付けていることはありますか。
千保さん:
その他に気を付けていることとしては、薬局でウロペーパーを買い、尿に蛋白や糖が出ていないかどうかを毎日測っています。私は日本酒も好きですが、甘いものが大好きなことでも有名です。それでも毎年受ける人間ドックでは、糖尿病もコレステロールも肝臓も全く心配なく、医師から褒められることもあるのですよ。