移植手術へ
手術前には、お兄様と何か話をされましたか。
手術前のお兄様の様子
村山さん:
はい。手術前日に兄から、「怖くない?」と聞かれました。夕食後でほとんど人がいなくなった病院のラウンジで、二人だけで、腎機能が回復したら何を食べたいとか、どこへ行きたいとか話したことを覚えています。
村山さんは、手術は怖くなかったのですか。
村山さん:
あまり怖くなかったですね。手術前日にも関わらず、病室ではテレビのドラマのことを一番気にしていたくらいですし(笑)。
そして手術当日を迎えたわけですが、手術室にはどのように向かったのですか。
村山さん:
麻酔前投薬をされ、半分意識がない感じで寝たまま手術室に向かいました。ですから、手術室に着くまでの間に声をかけられたり、話したりしたらしいのですが、覚えていないです。
無事手術を終えて目が覚めた時は、どのような感じでしたか。
村山さん:
目が覚めた時は、周りにたくさんの人がいました。兄の奥さんのお母さんなども居て、「いろいろな人が居るなぁ」と思いました。
ご自身のお母様からは何か話しかけられましたか。
村山さん:
母に会ったのは、病室に戻った直後でした。「大丈夫?ごめんね、ありがとう、ありがとう」と叫んで私の手を握り、さすっていましたね。
その後、手術の痛みはどのくらいの期間続きましたか。
村山さん:
術後2日間は、硬膜外麻酔が効いていたせいか、全く痛みを感じませんでした。通常は内視鏡手術で腎臓を摘出するのですが、予定していた手術日に急遽、内視鏡での手術ができなくなってしまったとのことで、開腹手術となりました。そのため硬膜外麻酔を入れてくださったのだと思います。硬膜外麻酔が切れた3日目から5日目ぐらいまでは、傷がズキズキ痛み、痛み止めの飲み薬や坐薬をお願いしました。痛みが引くまでに1週間くらいかかりましたね。
ねぎらい
手術後、お兄様とはいつごろ会われたのですか。
村山さん:
兄とは手術後、2日目くらいに会いました。私は兄が無菌状態の部屋に居るのかと思っていたのですが、普通の病室にいて、兄からは、「おう」みたいな感じで声を掛けられ、意外にあっさりしていましたね(笑)。
入院中は、術後の痛み以外で、困ったことや、つらかったことはありましたか。
村山さん:
術前は病院内でもエレベーターを使わず、2段跳びぐらいの勢いで階段を駆け上がっていましたが、さすがに術後はゆったり歩くのがやっと、という状態になってしまいました。また、食欲も落ち、3キロほど体重が減りました。
手術前後で、どのくらいの期間入院しましたか。また、退院後いつごろから、仕事や家事ができるようになりましたか。
村山さん:
手術の際には10日ほど入院して、退院から2週間で職場復帰しました。職場復帰後の最初の2週間は、本当に階段を駆け上がれなかったですね。1カ月たったら普通になっていましたけれど。当時の職場は、スーパーマーケット内のテナントショップで、従業員はエスカレーターを使ってはいけないのですが、店長にお願いをして特別に使わせてもらいました。体が完全に戻ったのは、退院後半年ぐらいたったころです。その頃には、臓器提供したことも忘れるようになっていましたね(笑)。
退院後は、お兄様から何か連絡はありましたか。
村山さん:
私が退院したその日に、兄にメールを送ったら、兄からは、「お疲れさんでした。2月2日から人生が180度変わった…無理するなよ。」というようなメールが返ってきました。これまで聞いたことの無いような言葉だったので驚いたのですが、うれしかったですね。私からは、「今までは、友達と会話は楽しめても食事は楽しめなかっただろうから、退院したら友達と会ってきたら?」というような返信をしました。兄とお互いにねぎらったのは人生で初めてでしたね。
ドナー検診
臓器提供後からこれまで、体調面でつらかったことはありましたか。
村山さん:
特にありません。
ドナー検診には、毎年行かれているのですか。
村山さん:
半年に1回行っています。ドナー検診で、コレステロール値が高いことの指摘を受け、コレステロールを下げる薬を1日1錠服用しています。
臓器提供後からこれまで、ドナー検診以外で、入院や通院はありましたか。
村山さん:
2年ほど前に、市の健康診断で大腸ポリープが見つかり、3日ほど入院しました。兄と一緒に、ドナーの方々が集まる「ドナーの会」に毎年必ず行くのですが、そこで先生から、「ドナー検診で満足してしまう人がいますが、ドナー検診ではがんは見つからないので、がん検診は絶対に行ってください」と言われたので、「そうだな」と思い、素直に健診に行ってみたら、ポリープが見つかったのです(笑)。
ドナーの会へは、毎年行っているのですか。
村山さん:
はい。臓器提供後、ドナー体験のブログを立ち上げた時に、ブログにコメントをくださった方に誘われたのがきっかけです。ドナーの会では、必ず先生の講演があり、「残った腎臓に負担をかけないためにも、太らないように気を付けましょう」というお話をされることが多いのですが、やはり、1年に1回、病院の先生からのお話をお聞きすることで、気持ちが新たになりますね。
臓器提供後、特に気を付けてきたことがあれば、教えてください。
臓器提供後、家族でラフティングにも挑戦しました
村山さん:
ドナー検診にきちんと行くことと、年に1回、必ずがん検診を受けることです。無理をせず、自然体で生きるようにしています。