大阪医科大学 腎泌尿器外科では、2013年に腎不全・腎移植総合管理センターを開設し、トータル・リーナル・ケア(全人的・包括的腎疾患治療)の概念に基づいて、慢性腎臓病に対する最新・最適な治療を提供されています。センター開設時より、腎不全保存期の治療から、末期腎不全における透析や腎移植などの腎代替療法までを一貫して行われている平野先生に、大阪医科大学における腎移植医療への取組み、今後の展開についてお聞きしました。

Chapter1 「腎不全・腎移植総合管理センター」の開設にいたるまで

平野先生は腎臓内科医ですが、いつ頃から移植医療に携わっていらっしゃるのですか。

私は腎臓内科医になったばかりのころから、「血液透析と腹膜透析は腎臓内科で診るのに、腎移植となると泌尿器科や外科で診るのはなぜなのか」という疑問があり、同じ科で一貫して診ることが患者さんにとっても良いと考えていました。その後赴任した病院で、初めて腎移植後の患者さんのフォローをすることになったため、東京女子医科大学病院の移植勉強会に参加しました。その勉強会がきっかけとなり、フェローとして東京女子医大で腎移植を学ぶようになり、その後、移植内科をやらないかというお話をいただき、東京女子医大で勤務することになりました。
現在は出身大学の大阪医科大学に戻り、診療にあたっています。

大阪医科大学に戻られた後、なぜ、腎不全・腎移植総合管理センターを開設されたのでしょうか。

平野先生

もともと、トータル・リーナル・ケア(全人的・包括的腎疾患治療)を行いたいと考えていたので、慢性腎不全の管理、血液透析・腹膜透析導入、腎移植手術などを一つのところで専門に行える組織が必要と考え腎不全・腎移植総合管理センターを開設しました。このセンターは、保存療法から透析、腎移植などの腎代替療法を全てにわたり行える部門です。
現在センターでは、医師や薬剤師、看護師、透析臨床工学士、栄養士、ケースワーカーが一体となって治療にあたるようになっています。保存期の療養指導ができる看護師もおります。
当院では、以前から腎移植は行われていましたが、年に1、2件でした。センターを開設し体制が整ってからは、2014年は13件、2015年は12件と、だいたい月に一度のペースで行っています。

センターの開設後、どのような変化がありましたか。

医療スタッフの面では、薬剤師、栄養士などのコメディカルの方々が以前よりもさらに協力的になりました。腎移植に関しては、患者さんから、「どのくらいの費用がかかるのか」というような質問が出ることもありますので、その場合にはすぐに医事課のスタッフを呼んで説明してもらいます。
また、レシピエント移植コーディネーターを中心に、移植後の患者さんの血圧管理や体重管理などもきちんと行っています。服薬管理についても、外来受診時に残薬を記入してもらうなど、しっかりと行っています。
最近は移植前から、必要がある患者さんには体重や血圧のコントロールを徹底してもらうなど、厳しく自己管理をしていただいているので、そのような患者さんは術後の自己管理もしっかりとできる方が多いです。
腎臓内科との連携という観点から言うと、月に2回くらいは、腎臓内科の先生にもカンファレンスに入ってもらい、密に連携できるようになりました。当センターでは、腎代替療法外来を行っており、腎臓内科で診ている患者さんの腎機能が悪化し腎代替療法を将来的に必要と判断された段階で、全員当センターを受診していただくという流れになっています。