※このインタビューは、虎の門病院 分院 腎センター外科にて2016年2月に行ったものです。
虎の門病院 分院 腎センター外科では、腎移植手術や、血液透析治療のための内シャント作成、二次性副甲状腺機能亢進症における副甲状腺摘出術など、腎不全患者さんに対する外科治療全般を行っています。虎の門病院 分院における腎不全治療への取組みと今後の展開について、腎センター外科 部長代行の丸井祐二先生にお聞きしました。

Chapter1 腎不全治療への取組みについて

虎の門病院 分院では、腎不全患者さんに対してどのような体制で治療が行われていますか。

当院の腎センターでは、内科と外科が緊密な連携をとりながら、総合的な診療を行っています。腎不全患者さんの治療においては、2012年より、腎不全保存期相談外来も行っています。腎不全保存期相談外来では、慢性腎臓病(CKD)の早期から患者さんに関わり、保存期をできるだけ長く維持することや、病状に合わせて患者さん自身が治療法を選択し、納得して治療を受けることができるように支援を行っています。末期腎不全における腎代替療法(腎移植、血液透析、腹膜透析)の選択においても、ご家族と一緒に相談外来を受診いただき、ご自身の将来設計、お仕事やご家庭の状況などを踏まえて、より適した治療法を選択していただくようにしています。

透析や腎移植を選択された患者さんが、腎センター外科で、シャントの手術や腎移植手術を受けるという流れになっているのですね。こちらの病院では、年間何名くらいの方が透析導入されているのでしょうか。

虎の門病院 分院における年間の透析導入患者数は100人くらいです。腎センター外科では、シャントの手術自体はPTA(経皮的血管拡張術)を含めて、年間300件くらい行っています。
※シャントの血管が狭くなったり、詰まったりした部分に先端に風船(バルーン)のついたカテーテルを入れ、狭窄部を拡張する治療。

腎移植についてはどうでしょうか。

当院では、生体腎移植、死体腎移植あわせて年間約15例前後を行っています。2015年は生体腎移植10例、死体腎移植2例でした。

虎の門病院ではいつごろから腎移植が行われているのですか。

虎の門病院 分院と虎の門病院 本院(東京都港区虎ノ門)では、1982年からこれまでに500件以上の腎移植を行っています。以前はこちらの分院のみで腎移植を行っていましたが、2002年からは本院でも行うようになりました。

現在はどのような体制で腎移植が行われていますか。

移植外科医、腎臓内科医、看護師、薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカーなどがチームとなって腎移植を行っています。

腎センター外科では、腎移植手術やシャント手術の他にどのような手術を行っているのですか。

丸井先生

腎センター外科では、先ほどお話したように、血液透析の際のシャント作成、腹膜透析の際のカテーテル留置術、合併症の手術、腎移植手術、ドナーの腎摘出術など、腎不全患者さんの外科手術全般を行っています。ドナーの手術に関しては、現在は、経腹的腹腔鏡下ハンドアシストドナー腎摘出術*1)と、後腹膜鏡下ドナー腎摘出術*2)という2つの方法でドナーの腎摘出を行うことができますので、患者さんの状態に合わせてドナーの手術を選べるようになっています。
*1 胃腸や肝臓などの存在する腹腔に二酸化炭素を入れて膨らませ、腹腔鏡というカメラで観察しながら手術を行う。ハンドアシスト法では、腎臓を取り出す傷から左手を挿入して行うため、開腹手術のように指先の感覚を生かして愛護的な操作を行えることがメリット。
*2 腎臓の存在する後腹膜腔という脂肪などが存在する領域を押し広げて空間を作り、ここを二酸化炭素で膨らませて腹腔鏡で観察しながら手術を行う。胃腸など腹腔内臓器を傷つける心配がなく、また、以前の手術などによる腹腔内の強い癒着がある方には特に適している。


また、腎がんの腹腔鏡下手術や、常染色体優勢多発性嚢胞腎(ADPKD)の患者さんの腎臓摘出術、透析患者さんの副甲状腺摘出術も行っています。透析患者さんの合併症である二次性副甲状腺機能亢進症の治療は、以前は副甲状腺摘出術が主流でしたが、レグパラ錠(一般名:シナカルセト塩酸塩)という副甲状腺ホルモンの分泌を抑える薬が発売されてからは、手術件数が大幅に減りました。現在でも薬がうまく使えない患者さんや、あまりにも副甲状腺ホルモンが多い患者さんは、摘出術を行っています。
※両側の腎臓に多数の嚢胞が発生して大きくなっていく遺伝性の病気