絆を感じて
移植手術を終えた時のことは覚えていますか。
川上さん:
手術室に入ったのが夜の12時前で、目が覚めたときは早朝でした。薄暗い広い部屋でたくさんの管に繋がれてぼーっとしていましたが、無事手術が終わったのだな、と安堵の気持ちでいっぱいでした。
自分には出ている感覚は全くありませんでしたが、先生から、「おしっこが出とるたい!」と言われた時はとてもうれしかったですね。20数年おしっこが出ていませんでしたので、「あー、出るんだ」と感動しました。
手術後の経過はどうでしたか。
川上さん:
とても順調で、快適な入院生活でした。透析期間が長かったので、膀胱がピンポン玉くらいしかないということで、最初の頃は尿量が少なかったのですが、徐々に尿量も増えていきました。
移植後はどのような変化がありましたか。
川上さん:
心身共に健康になった気がしますし、ちょっとしたことでも、“ありがとうね”と自然に感謝の言葉が出るようになりました。心の中にある良い感情を言葉に出して伝えられるようになったので、公園で若いお母さんや赤ちゃんに「かわいいねぇ」と笑顔で話しかけたりして、相手のうれしそうな顔を見て、ほんわかした気持ちになったりしています。
私は、ドナーの方はとても心優しい方だったのだと思うのです。ドナーの方から頂いた腎臓のおかげで、昔の私のとげとげしさが取れた気がします。「絆」はどこにでもあるのだと感じ、皆さんに支えられて今の私があるのだと、感謝しながら毎日を過ごしています。
移植後、うれしかったことはありますか。
川上さん:
自由に使える時間が多くなったことはうれしいですね。映画を観に行ったり、花を見に行ったりと、思いついたらすぐに行動に移せるようになりました。いろいろな所に出掛けて、頂いた腎臓に、「桜を一緒に見たね!綺麗だったね!」などといつも話しかけています。
また、自分ではあまり自覚は無いのですが、友人や看護師さんに、「顔色が良くなったね!」と言われます。
杉本コーディネーター:
川上さんは、日に日に艶やかになっていかれますね。いつも外来で会うのが楽しみです。
頂いた腎臓とはよく会話をするのですか。
川上さん:
毎日話しています。「おはよう、今日もよろしくね」「おしっこいっぱい出たね、ありがとう」「今日は頑張り過ぎてきつかったね、ごめんね」などと会話をしながらいつも支えてもらっています。ときどき忙しくてあまり話せないこともあるのですが、そのようなときには、「ごめんね」とあやまります。夜寝るときにも必ず、「今から寝るよー」と声をかけています。今日もずっと一緒だったと思うと幸せな気持ちになれるのです。
移植後の日常生活では、どのようなことに気を付けて生活していますか。
川上さん:
薬を飲み忘れないようにする、水分を十分取る、バランスの良い食事を取る、睡眠を十分に取る、軽い運動をする(頑張り過ぎない)、感染予防のために手洗い・うがい、マスクの着用をする、特に冬は人混みには行かないようにする、などに気を付けて生活しています。
毎日の服薬や、血圧、体重などはどのように管理しているのですか。
川上さん:
薬は1日分を服薬時間に分けてピルケースに入れています。ほぼ決められた時間通りにきちんと飲んでいます。また、熊本地震の経験を教訓に、1週間分の薬をポーチに入れ、いつも持ち歩いています。
血圧、体重、尿量(飲水量)、体調は、毎日日記帳に記録しています。今でもおしっこがいっぱい出たときはうれしいですね(笑)。
移植後、新たに始めたことはありますか。
川上さん:
新たにということではありませんが、移植後しばらくは、ジムでの運動は控えていたので、体全体の筋肉が落ちてしまい、これではいけないと思い、マシンを使った筋力トレーニングを始めました。筋肉は落ちるのは早いですが、元に戻すには時間がかかりますね(笑)。気長に続けていこうと思います。
あと、これから他県にいる、学生時代の友達のところを巡れたらいいなと思っています。
先生、一般的に、移植後はいつ頃から運動を始めてもよいのでしょうか。
日髙先生:
ウォーキングなどの軽い運動であれば、手術の3~4週間後くらいからやっていただいてよいと思います。
移植前にゴルフをしていた患者さんからは、「ゴルフはいつからしていいですか?」と聞かれることが多いのですが、「3カ月以降はいいですよ」とお伝えしています。
移植者のスポーツ大会などもありますので、そのような大会を目標に運動を始めるのもよいと思いますし、移植腎のためにも、毎日の生活に運動を取り入れていってほしいですね。