腎移植事典:基本編

腎移植事典:基本編

腎移植を考えるにあたって知っておきたい基本情報をまとめています。これから移植をお考えの方に、特に役立つ内容です。

2腎移植とは

1. 腎移植の種類

腎移植とは、どのような治療法ですか?

術後の生活の質=QOL(Quality of Life)の改善が見込まれる治療法です。

食事制限や水分制限から解放され、スポーツや旅行を楽しむことができます。仕事に就くなど、社会復帰の可能性も大いに高まります。

腎移植には、どのような種類がありますか?

腎移植には、大きく分けて下記の2種類があります。

●生体腎移植:
親・兄弟・祖父母などの6親等以内の血族又は配偶者と3親等以内の姻族から、2つの腎臓のうちの1つの提供を受ける移植。

●献腎移植:
亡くなられた方から腎臓を提供していただく移植。献腎移植には心臓死からの移植と脳死からの移植があります。

腎臓を提供する人を「ドナー」、腎移植を受ける人を「レシピエント」と言います。

生体腎移植と献腎移植のメリット・デメリットは何ですか?

●生体腎移植

腎移植手術

<メリット>
・移植手術の日程を予め決めることができるため、十分な準備をした上で手術を行うことができる。
そのため、手術前に準備が必要な移植(血液型不適合移植など)が可能。
・健康なドナーからの腎臓提供のため、手術直後から移植腎の状態がよく、献腎移植と比較して、生着率も良好。

<デメリット>
・健康なドナーに対しての腎摘出手術が必要。
・ドナーにも、術前の検査及び術後の定期検診が必要。

●献腎移植

カレンダー

<メリット>
・ドナーに負担がかからない。

<デメリット>
・献腎移植希望登録を行ってから移植を受けるまでの平均待機期間が、約14年6カ月(2012年末時点)と長期におよび、なかなか移植の機会に恵まれない。
・待機期間が長いため、その間に透析合併症が進行する場合がある。
・ドナーの方の臓器提供前の状態の影響で、移植直後は尿が出ないこともあり、しばらくの間は透析療法が必要になる場合もある。
・短期・長期の移植腎生着率が、生体腎移植と比較して多少劣る。

2. 腎移植手術について

腎臓は、どこに移植されるのですか?

腎臓は、通常は右の下腹部に移植します。

ドナーから提供された腎臓の血管(動脈と静脈)をレシピエントの足に行く血管にそれぞれつなぎ、尿管をレシピエントの膀胱へつなぎます。また、レシピエント自身の腎臓は、ほとんどの場合は摘出せずにそのまま残します。

生体腎移植手術

ドナーの手術は、どのように行われるのですか?

従来は、腹部斜切開(おなかの横を切る)による手術が主でしたが、現在は腹腔鏡による腎臓の摘出手術が主流となっています。

腹腔鏡を用いた手術の場合、従来の手術と比較して傷が小さいため、手術後の痛みが少なく、術後の回復が早いことがメリットです。一概にはいえませんが、事務仕事であれば術後2週間程度で仕事に復帰することも可能です。

ドナー手術

3. 腎移植の件数と成績

日本では、1年間にどのくらいの数の腎移植が行われていますか?

2012年には、生体腎移植と献腎移植の合計で、年間約1600件の腎移植が行われています。
ここ10年は、特に生体腎移植の件数が伸びています。

腎移植数

移植した腎臓は、どのくらいもちますか?

腎移植の成績は一般的に生着率で表します。
「生着率」とは“移植してからある一定期間機能している移植腎の割合”のことです。

近年の新しい免疫抑制剤の登場や、組織適合性検査方法の進歩により、腎移植の生着率は、年々向上しています。
2006年〜2012年においては、生体腎移植の1年生着率が97.8%・5年生着率が92.8%、献腎移植の1年生着率が93.9%、5年生着率が83.9%となっています。

生存率

生着率

監修:東京女子医科大学八千代医療センター 泌尿器科 乾政志先生

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監修:東京女子医科大学八千代医療センター 泌尿器科 乾政志先生
http://www.twmu.ac.jp/TYMC/


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