3生体腎移植の流れ
1. 生体腎移植の流れ
生体腎移植を希望する場合の、流れを教えてください。
6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族の中にドナー(臓器を提供する方)候補者がいる場合、ドナー候補者とレシピエント(臓器移植を受ける方)の適合性を調べるために、血液型・組織適合性・クロスマッチテストなどの検査を行い、詳しい諸検査によって手術の可否を判断します。一般的には初診から移植手術実施までには2~3ヶ月程度の時間が必要です。
透析をしないで、腎移植をすることができますか?
はい、できます。
透析導入前でも腎移植は可能で、これを「先行的腎移植」と呼びます。先行的腎移植は、透析を経てから移植する場合と比較して、生着率や生存率がよいとされています。また、透析をする場合でも、その期間が少しでも短い方が合併症は少なくなります。
ドナーとレシピエントには、どのような検査が必要ですか?
組織適合性検査の後、下記のような他科の受診や各種検査を受けて頂きます。ドナーは下記以外にも、成人病検診や人間ドック等を受診する必要のあるケースもあります。
2. 生体腎移植ドナーについて
生体腎移植ドナーになるためには、どのような条件がありますか?
生体腎移植において、ドナーになれるのは、親族(6親等内の血族、配偶者と3親等内の姻族)で、自らの意思で腎臓の提供を希望されている方であり、提供に強制、および金銭その他の金品の授受がないことが大原則となります。
ドナーの適応基準は下記の通りとなります。
<腎臓提供者(ドナー)適応基準>
1.以下の疾患または状態を伴わないこと
・全身性の活動性感染症
・HIV抗体陽性
・クロイツフェルト・ヤコブ病
・悪性腫瘍(原発性脳腫瘍及び治癒したと考えられるものを除く)
2.以下の疾患または状態が存在する場合は、慎重に適応を決定する
a. 器質的腎疾患の存在(疾患の治療上の必要から摘出されたものは移植の対象から除く)
b. 70歳以上
3.腎機能が良好であること
引用:日本臨床腎移植学会「生体腎移植ガイドライン」
血液型(ABO)が違っても、ドナーになることができますか?
ドナーとレシピエントの関係において、血液型(ABO)は下記表のように「適合(一致)」「適合(不一致)」「不適合」に分類されます。
血液型不適合移植の場合は、レシピエントの血液中に持っている自分以外の血液型に対する抗体が、移植された腎臓に標識されているドナーの血液型抗原に結合反応することで拒絶反応が生じます。そのため、移植前に抗体を除去したり、抗体の産生を抑制する薬剤を使用します。移植成績は、血液型適合症例と大きな差はありません。
血液型適合、不適合に関わらず、移植手術は可能です。ただし、不適合の場合は、術前処置が必要になります。
HLAとは何ですか?HLA不適合でも腎移植はできますか?
HLA(Human Leukocyte Antigen)とは日本語では「ヒト白血球抗原」といい、両親から遺伝的に受け継がれる白血球の型のことです。HLAは一対となっており、両親からその半分ずつを受け継ぐため、子供同士では4つの組み合わせがあり、兄弟姉妹間では4分の1の確率でHLA型がすべて一致します。しかし、他人同士でHLAの型がすべて一致する確率は、数百人から数万人に1人となり、極めて低いです。
HLAの不一致数の少ない方が腎移植の成績はよいとされていますが、現在では免疫抑制剤の進歩により、HLA不一致数が多い場合でも、一致しているケースと遜色ない生着率が得られるようになっています。なお、腎移植では、A、B、DRの適合性が重視されています。
ドナーは、腎臓が1つになっても大丈夫ですか?
腎臓が1つになると、腎機能は約2〜3割程度低下すると言われていますので、腎臓にとってリスクとなることは避けなければなりませんが、大きな問題となる合併症などはほぼ起きません。生体ドナーの生存率は、非提供者の生存率と同等であることが報告されています。
監修:東京女子医科大学八千代医療センター 泌尿器科 乾政志先生