インフルエンザを予防するには

毎日寒い日が続いていますね。今年もインフルエンザの流行時期となり、先日、厚生労働省は推定患者数が累積で約400万人に迫っていると発表しました。

インフルエンザは毎年冬に流行します。2月がピークのことが多いのですが、今年は1月にすでにピークを迎えた感があるようです。残念ながら聖マリアンナ医科大学病院内でも発生があり、保健所への届け出をしています。本年は高齢者に免疫の少ないH3N2(A型)が流行しているようです。ご存知のようにインフルエンザワクチンの予防接種が最も有効な対策で、本年選定されたワクチン株にはこのH3N2も含まれています。
しかし、予防接種をしていても、インフルエンザにかからない割合は40%という報告もありますから、手洗い、うがい、マスクをして予防対策をしっかりしましょう。

予防

インフルエンザは飛沫感染といって、ウィルスを含む分泌物が粘膜から入ってくることからうつります。マスクをすることによって、それらが口や鼻から入るのを防ぐことになるのですが、実際には、分泌物が何かを介して手指につき、その手で目や鼻をこすってしまうことから体に侵入するのを、物理的に防ぐ効果もあります。
そして、ウィルスは乾燥した環境を好むので、冬の乾燥した環境はインフルエンザの天国なのです。寒くなるとヒトの活動性が下がって代謝が落ち、体力・抵抗力が落ちがちです。マスクは鼻腔口腔内を湿った環境に保つ役割があり、ウィルスが入ってきても増殖しにくくできる効果も期待できます。
そして、自分でできる予防策はやはり、体調維持につきます。十分な水分摂取と睡眠、適切な食事を取ることは、いつも大切なうえ、可能であれば有酸素運動を日常生活に取り入れて、体力の維持に努めましょう。

体力維持

そうはいっても、かかってしまったら、早く対処しなくてはいけません。同居の家族がインフルエンザになってしまうこともあるかもしれませんしね。免疫抑制剤を飲んでいる移植者は相対的に免疫力が少し弱い状態と考えられますから、タミフルのインフルエンザ予防投与が保険適用として認められています。ただし、腎機能に合わせて調節が必要なうえ、全く副作用がないわけでもないので、同居家族の感染や、感染者と濃厚接触した時に限られます。
また、なんだか風邪を引いたようで熱が出てきた、のども痛いぞ、となったらすぐにインフルエンザの検査をし、陽性であればインフルエンザ薬を開始したほうが良いと思われます。先ほど、高齢者に免疫の少ないH3N2(A型)が流行しているようだと書きましたが、ご自分が高齢者だと思われる方へのお知らせだけでなく、高齢者はかかっても熱が高くならないことがあり、咳やのどが痛い方が近くにいる際に注意が必要ということなのです。

身近な漢方薬について

腎移植患者さんには、風邪薬としてはアセトミノフェン以外は処方しにくく、症状になかなか対処できないことがあるのですが、生薬のエキス剤としての漢方は食品に近いわけですから、比較的使いやすいと考えています。(市販されているのもそのような理由です。)
かぜの症状がある移植患者さんに、私が処方している漢方薬について少しご紹介します。
まずはじめに、葛根湯(カッコントウ)です。これは風邪の引き始め、熱が出る前によく効きます。寒気があり熱が出そうなころが一番有効で、インフルエンザだとしても、予防接種している方はかからずに済むかどうかの分かれ目の時期です。比較的体力のある方に向いており、関節、のどの痛みをとり、体を温めて汗を出し、寒気に縮こまった体をリラックスさせて、体力の回復とともに風邪を治してくれます。試す価値はありそうですね。もちろん汗が出る分、水分補給が重要です。
体力にやや自信のない方向けの漢方もありますよ。補中益気湯(ホチュウエッキトウ)です。人参などが入っていて、食欲を増し、気力・体力がアップしそうです。
インフルエンザではないけれど鼻水が続いて、という方には、小青竜湯(ショウセイリュウトウ)がよさそうです。これは、いわゆる抗アレルギー薬と違って、全く眠くならないうえ、腎臓にも負担がほとんどありません。
乾いて激しい咳には麦門冬湯(バクモンドウトウ)が効きそうです。これを飲むと香ばしい感じる人もいます。
ただ、漢方は一回でズバッと効くものではないようなので、何となく効いてきたかな?くらいを期待しましょう。あれ、そういえば気にならなくなってる、という風に効いたら「自分に合う」漢方薬だったということです。
ちなみに、生薬、すなわち食べ物が成分となっていることが安心材料なのですが、食事内容に影響を受けることを考慮して食前内服がおすすめです。

このほか、インフルエンザの治療後に、まだ体調が思わしくないときに効果のある漢方もあります。
いずれも個人個人の症状に合わせて、必ず担当医とご相談の上、お使いになるのがよいと思います。
手洗い・うがいなどの感染予防の基本を徹底して、さらに自分に合った予防法を加えることで、体調管理をしていきましょう。