1月に入り雪が積もる日もあり、この先もまだまだ厳しい寒さが続きそうです。このような時期は乾燥と寒さで風邪を引きやすくなるのでご用心。そして、もう1つ要注意な病気があります。 本日は、季節の変わり目や寒さに縮こまりやすい時期に気を付けていただきたい病気、帯状疱疹についてお話しします。
帯状疱疹とは
帯状疱疹は、ヘルペスウイルスのうち、水ぼうそう(水痘)を起こすウイルスが原因で起こります。多くの人が子どものころ水ぼうそうにかかりますよね。水ぼうそうが治った後、ウイルスが神経に潜伏し、ストレスがかかったり、免疫力が下がったりしたことをきっかけに再活性化して、帯状疱疹として発症してしまうのです。
帯状疱疹の症状
症状としては、まず、背中や首、おしりあたりから、刺すような痛み(虫に刺されたと勘違いする人もいます)がおき、その痛みが神経に沿って広がっていきます。その後、ぶつぶつとした発疹ができ、次第に水疱に変わっていきます。この痛みと発疹の広がりは神経の走行に沿って広がる(背中から脇腹や、おしりから足のほうに帯のように広がる)ので、「帯状疱疹」と言われるのです。首の後ろから、頭や顔に広がることもあります。多くは、背中から脇腹、胸(またはお腹)に広がるのですが、背中は自分で見えないため、脇や胸に広がってから、また、発熱など、さらに体調が悪くなってから、この病気と気付く人もいます。
さて、ここまで知ると、当然、免疫抑制薬を飲んでいる移植患者さんは、帯状疱疹になりやすいのでは?という心配がおきます。しかし、実際には、半数以上の移植患者さんは帯状疱疹を生涯経験しないようです。帯状疱疹にかかってしまうのは、特に、免疫力が低下する状況、すなわち、寒冷や季節の変わり目で体調を崩しやすいとき、過労や寝不足、ある程度以上の心身のストレスがあるときだといえます。
帯状疱疹にかかってしまったら? 帯状疱疹を予防するには?
そこで、知っておいていただきたいことが3つあります。
1つ目は、先に述べたような症状があるときは、とにかく早く主治医にお伝えください。なぜなら、帯状疱疹には治療する薬があり、発症してから薬の服用を開始するのが早ければ早いほど、治るのも早く、後遺症(帯状疱疹後神経痛:帯状疱疹の皮疹(水疱など)が消え、帯状疱疹が治った後も続く痛みのこと)も残りにくいからです。
2つ目は、帯状疱疹の治療薬、アシクロビルなどの抗ウイルス薬は、ウイルスが増殖することを抑えますが、ウイルス自身を殺すのは、病気に反応したご自身の免疫力です。ですから、免疫力の低下が発症の原因だと考えると、その原因をできるだけ改善することが治療の上で大切になります。
3つ目は、帯状疱疹は、ワクチン接種による予防が期待できます。これまで帯状疱疹のワクチンは生ワクチンといって、弱毒化された生きたウイルスを接種する方法がとられてきたため、移植患者さんは接種することができませんでした。
しかし、2020年1月から、不活化ワクチンである、シングリックス®というサブユニットワクチンが日本で使用可能となりました。これは、移植患者さんでも使用可能な上、生ワクチンよりも帯状疱疹ウイルスに対しての免疫誘導効果が増強されており、日本人での試験では80~90%の効果(1)、免疫抑制薬を内服している人でも70%前後の効果、帯状疱疹後神経痛予防への効果は約90%ある(2)とされています。50歳以上の方は接種をご検討ください。
ただし、接種は自費で、2回接種で4万円程度の費用がかかります(このワクチンは2回接種が必要です)。また、副反応として、3割程度の人が接種後に頭痛や疲労感を感じ、接種時に局所痛があるとのことです。
ワクチン接種に関しては、フォローアップを受けている病院の先生やレシピエント移植コーディネーターにお問合わせください。
帯状疱疹にかからないために
帯状疱疹そのものの痛みは大変つらいものですが、治療が遅れるとウイルスがいなくなっても神経痛が数カ月以上にわたって残ってしまうことがあります(帯状疱疹後神経痛)。
ぜひ帯状疱疹についての知識を備えていただき、「あれ、おかしいぞ」と感じたら、ためらわずに病院に連絡するようにしてください。治療については、近くの皮膚科、内科や、急ぎの場合には時間外・休日夜間診療所でも対応して薬を出してくれます。
治療薬があるとはいえ、抗ウイルス薬には、腎臓への負担など少し副作用もありますので、帯状疱疹にかからないように、この冬、そしてこの先を乗り切っていただきたいと思います。そのためには、繰り返しになりますが、栄養と水分、睡眠をしっかりとり、朝日を浴びて適度に体を動かし、体力を維持していただくことが大事です。
参考文献
(1)池松秀之ら: 新規アジュバント添加帯状疱疹サブユニットワクチンの日本人における50歳以上および70歳以上の有効性. 感染症誌018;92:103-114.
(2)Bastidas A. et al: Effect of recombinant zoster vaccine on incidence of herpes zoster after autologous stem cell transplantation. JAMA 2019;322:123-133.