腰痛の原因

腰痛、特に慢性腰痛の原因は、筋肉、筋膜からの痛みや、椎間板(ついかんばん)の変化によって神経が圧迫されて起こると考えられていますが、原因不明の場合もあります。これに対して、急性の腰痛、いわゆるギックリ腰は、筋肉の挫傷ですので、安静が一番の治療です。

椎間板は椎体(ついたい:椎骨の前部を占める半円形の部分。ダルマ落としのように重なっている背骨の部分こと。)という骨の間にあり、体幹の筋力低下と体幹の不安定は、椎間板への負荷を増し、慢性腰痛の1つの原因となります。
また、この椎体と椎間板で構成される脊柱がデコボコしたりゆがんだりして、脊髄神経を圧迫する状態となると痛みを生じ、椎間板がつぶれて後方へ飛び出すとヘルニアとなり強い痛みが出ます。

体幹の安定に必要なこと

体幹の安定には、体幹深部筋(コアマッスル)の適切な活動が必要です。体幹の筋肉トレーニングは、代表的なコアマッスルである、おなかを取り囲む腹横筋や、椎体どうしをつなぐ多裂筋の筋力アップにより、体幹を安定させ、椎間板の負担を減らすことが期待できます。その上、脊柱アライメント(解剖学的に正しい脊柱の位置や姿勢、正中軸)の最適化にも重要と考えられています。

筋肉の説明

具体的には、椎間板性腰痛や椎間板ヘルニア(①)は前屈によって、椎間板関節性腰痛や腰椎分離症(②)は腰椎伸展によって症状が増強することが多いので、前者には骨盤を前傾させ腰椎前弯を増強すること、後者には骨盤を後傾させて腰椎前湾を減少させることで、より適切な脊柱アライメントに近づくと考えられます。
ただし、椎体の老化や一部のヘルニアでは後屈でも痛みが増したり、前屈で痛みが軽減したりすることもあります。解剖学的には脊髄神経は椎体の後面にあるので、今回は紹介しませんでしたが、腰痛体操は腰椎前弯を軽減する骨盤の後傾運動が基本となります。

腰痛に対する運動療法

骨盤を前傾させるためには、脊柱起立筋や多裂筋の筋活動が重要なので、①のタイプの腰痛に対する運動療法は、多裂筋の筋トレであるバックブリッジ、およびハムストリングのストレッチが有用と思われます。
他方、骨盤後傾を目的とすると腹横筋の活動が重要となるので、②のタイプの腰痛には、腹横筋の筋トレであるプランクや腹筋トレーニング、大腿四頭筋のストレッチが有用のようです。肘つま先ブリッジで、対側の手、足をあげて伸ばす筋トレは、腹横筋、多裂筋の両者に有効です(が、少々キツイです)。

ただし、ご紹介してきたトレーニングは、腰痛については予防が主目的ですので、すでに症状が強い方は、担当医やトレーナーと相談しながら、種々のストレッチや筋トレの中から、症状が軽減されるような組み合わせを選択していただくのがよいと思われます。