トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  いつも気になるクレアチニンのこと ー拒絶反応以外でクレアチニンが上がるときー

丸井 祐二先生 コラム

外来診察でいつも気になること、と言ったらやっぱり、クレアチニン(Cr)の検査結果ですね。

私の移植外来でも、移植後何年、いや十数年以上たった患者さんも、Cr値(以下血中Cr値のこと)の結果に変わりがないと、ほっと安堵の表情を浮かべられます。実は私も患者さんに同じ表情をお見せしているかもしれません。しかし、実際には毎回、少々Cr値が変動します。少しでも上がっていたら、必ず腎臓が悪くなっていることを表しているのでしょうか。

診察


■Crと腎機能
Crは筋肉が壊れて産生されてくる、生体には不要なもので、腎臓の糸球体でろ過され、尿に捨てられます。移植腎の中の糸球体全体の働き具合により、捨てられるCrが変動することから、血中に残ったCr、すなわちCr値から糸球体のろ過量を推測したものがeGFR(日本腎臓学会により提唱された、年齢と性別を加味した糸球体ろ過量の推定値)で、いわゆる「腎機能」の指標と考えられています。このeGFRが下がること=CKDステージの進行、という考え方に基づくと、Cr値の上昇=腎機能低下ということになります。


■Cr値が上がるとき
では、ここで、Cr値がどんな時に上がるかを考えてみましょう。まずは、Cr産生が増加した時です。筋組織は運動することにより、微細な断裂と修復を繰り返し、トレーニングなどの負荷がかかると、よりたくさん筋組織が修復されることで、筋肉は増強していきます。ですから、筋肉をよく使ったとき、運動をいつもより多くしたときには、Crの産生が増えますので、いつもの割合で糸球体から捨てられているとすると、Cr値は上昇することになります。でも、このとき、腎機能は低下しているわけではなく、いつもの調子で働いてくれているのです。この他にも、発熱したときは、筋肉が熱源の中心ですからCr産生は増えますし、何らかの外傷などで筋肉が壊れたときもCr値は上昇します。運動やスポーツだけでなく、引越や大掃除などでも普段使わない筋肉を使って、よりたくさん体を動かしているものです。

ランニング

もう1つは、血液が濃くなったとき、すなわち必要とする水分が体に保持できていないときです。Cr値は濃度ですから、体が脱水状態になり、血液が濃縮されていけば、Cr値も上がるわけです。どのようなときに、体内の水分が不足してしまうかというと、 スポーツに熱中して 汗をたくさんかいたとき、水分が取れなくてのどが乾いているとき、熱が出て知らず知らずのうちに体から水分が蒸発してしまったときなどや、空気が乾燥して呼吸によって体から水分が奪われていくときなどがあります。汗をたくさんかいたとき、お小水も少なくなり喉も渇きますが、足りなくなった水分をできるだけ逃がさないように、腎臓はお小水を生成する過程で、水分をできる限り再吸収しようとフル回転で働いた結果、お小水が濃くなるわけです。
先に述べたように、Crはお小水に捨てられるわけですから、このような脱水状態のときは、血中Cr値が上昇するとともに、尿中のCr値が非常に高くなっています。喉が渇いてお小水の色が濃くなっているときは、大切な腎臓に負担がかかっていることを思い出し、しっかりと水分を取りましょう。

そして、やはり一番心配なことは、移植腎に何かの異常が起こって、血液からの濾過がうまくいかなくなったときのことです。このようなときには、血中Cr値の上昇に対して、尿中のCr値の上昇がみられません。この原因は拒絶反応や薬剤の影響、感染症、血流障害(血栓症や低血圧)などが考えられますから、できるだけ速やかに原因を見つけ治療することが大切です。拒絶反応は移植後何年たっても起きます。つい薬を飲み忘れることがあった、ということが続いて、免疫抑制薬の血中濃度が低くなっていることがCr値の上昇と共に分かったときは、赤信号です。拒絶反応が疑われた場合の最も確実な診断手段は腎生検です。逆に、急なタクロリムスやシクロスポリン濃度の上昇は、腎臓の血管のれん縮から血流障害を引き起こして、Cr値上昇につながります。 下痢などで脱水になっているときなどは、血中濃度は上がりやすく、注意が必要です。


■Crが表すもの
このように、Cr値は腎臓の働きだけでなく、体の状態を反映していると考えることが大切です。私の外来では、「1割程度のCr値の増減はあるものですよ」とお話しし、それ以上の上昇があった場合は超音波などの検査を追加し、治療すべき病態が起きていないかを速やかに調べ、対処することが大切だと考えています。そして、明らかな原因がない場合は、あまり期間を空けずに再検査を行うようにしています。この間、患者さんには日々の生活で、体に負担がかかったりしていないかを見直してもらいつつ、十分な水分と睡眠を取ってもらうようお話しします。そこで良くなっていれば、ほっとしますし、改善がなければ更なる検査を進めて、腎生検の是非を考えるようにしています。やはり、腎臓で何が起こっているかを一番正確に知るには、腎臓自身に聞いてみるしかないからです。

そうはいっても、生き生きとした生活を送ることが、腎移植を受けた方々が希望されることだと思います。あまり細かいことを気にしないで、ただし、お薬だけはきちんと飲んで、できればハメをはずしすぎないで、ちょっと運動もして、のんびりと生活を楽しんでいっていただきたいと願っています。そのためのお手伝いや、ヒントをこれからもお届けしていきたいと思います。


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