こんにちは。本年は嬉しくない病気の流行で幕を開けて、心配されていることと思います。インフルエンザも心配なのに、仕事や用事で外に出ないわけにいかないし、どうしたらいいのかしら、と思っているあなたに、知っていてほしいことをお伝えします。
※このコラムは2020年2月16日時点の情報に基づいて書かれたものです。

コロナウイルスについて

コロナウイルスは、発熱や上気道症状を引き起こすウイルスで、従来、人に感染するものは6種類あることが知られていました。そのうちの2つは、中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)などの重症化傾向のある疾患の原因ウイルスが含まれています。残りの4種類のウイルスは、一般の風邪の原因の10~15%(流行期は35%)を占めます。新型コロナウイルスはこれらとは異なるウイルスです。

新型コロナウイルスはどのように感染する?

新型コロナウイルスは、飛沫感染、すなわち、感染者からの飛沫(くしゃみ、咳、つば、など)を、他者が口や鼻から吸い込み粘膜に付着して感染する、また、接触感染、すなわち、感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手で周りのものに触れ、他者がそこに触れることによってウイルスが手に付着し、その手で自身の口や鼻を触り粘膜から感染します。

感染を予防するためにはどうしたらいい?

インフルエンザの予防はどうしたらいいか、覚えていますか?インフルエンザも飛沫感染します。ですから、大切なのは、予防接種と、手洗い、うがい、人ごみの中ではマスク、そして、感染者に近づかないこと、でしたね。
新型コロナウイルスもこれらが有効です。また、潜伏期間でも人から人に感染するという報告はありますが、まだ確実なことはわかっていません。通常、肺炎などを起こすウイルス感染症の場合、症状が最も強いときに最も感染力があるといわれています。
具体的な水際対策としては、手についたウイルスがご自身の粘膜に触れないように、手を口、鼻、目にもっていかないように心がけ、こまめに石けんで手洗いをするようにしましょう。(予防接種や抗ウイルス薬の製造は、まだ目途が立っていません)

新型コロナウイルスに関する最新情報は、厚生労働省の以下のページをチェックしてみてください。
新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)

そして、なぜ、冬にインフルエンザなどが流行するかを考えたときに重要なことは、寒さと乾燥が関係しているということです。寒さで体温が下がると免疫力が低下します。そして、乾燥した空気にさらされることでウイルスが含んでいる水分が蒸発すると、ウイルスが軽くなって浮遊しやすくなり、口や鼻などから体内に侵入しやすくなって、感染しやすくなるのです。
ですから、体温を下げないように、手足を含めて保温に気を配り、口や鼻の粘膜が乾燥しないように、充分な水分摂取とマスク(最近手に入りにくいので、マフラーなどを使うのはどうでしょうか)が重要になるわけです。できるだけ室内の湿度も上げたいですね。洗濯物を室内に干したりして、加湿の工夫をしましょう。これらのことは、インフルエンザウイルスとコロナウイルス両方の予防につながると思います。
コロナウイルスはエンベロープという脂質性の膜のあるウイルスで、アルコール消毒剤によりその膜を壊すことでダメージを与えることができるので、刷り込み式のアルコール消毒剤や、食品用の高濃度アルコールスプレーを、手洗いができないときの手のひらや、外部からウイルスを持ち込む可能性のある場所に使うことは感染予防に有効と思われます。家の中の清掃においては、一般的な中性洗剤でもいいですよ。ただし、掃除のときは使い捨て手袋をしましょう。

これらのことを踏まえ、推奨される感染予防についてまとめると、以下のようになります。

<感染を予防するには>
1.石けんによる手洗い、できなければアルコール消毒液による手洗い
2.流行時期にはできるだけ人混みに出掛けない
3.マスクの着用

マスクはウイルスの侵入を完全に防ぐことはできないものの、喉・鼻の加湿や保温には役立つ。また、咳が出ている人の場合は、周囲に感染を広げてしまう可能性があるので、それを予防できる。
咳エチケットについてはこちらもご確認ください。
4.室温・加湿管理
室温20度以上、湿度50~60%を目標に。ただし、加湿器を使用する場合は、加湿器の衛生面(器機や水などを常に清潔に保つ)には注意が必要
5.免疫を保つために、充分な睡眠やバランスの取れた食事を取る

感染した疑いがあるときは?

さて、感染した疑いのあるときはどうしたらいいのか、ですが、風邪症状を感じたら、慌てず可及的速やかに医療機関に連絡しましょう。
新型コロナウイルスの感染者と直接、間接的に接触する機会があった場合、とくに、濃厚接触時(感染予防をしないで対面(目安として2m)で会話したり、手で触れたりすること)には検査が必要ですので、速やかにかかりつけ医療機関に連絡の上、マスクをして受診してください
2月1日付で新型コロナウイルスは指定感染症に指定されましたので、患者を見つけた医師には報告義務があり、都道府県知事は患者に入院を勧告し、指定医療機関への強制的な入院措置が行われます。また、患者には一定期間就業制限の指示を出すことができます。なお、入院などでかかる医療費は公費で負担されます。これは、新型コロナウイルスがさらに蔓延しないために非常に重要なことです。
また、免疫抑制薬を内服している移植患者さんは重症化する可能性があるので、疑わしい場合の医療機関受診はとても大切です。肺炎にならないように対処療法が行われます。
ちなみに、風邪症状とは、のどの痛み、発熱、咳、鼻水、くしゃみが主体で、上気道炎ともいわれます。一方、感染がさらに奥に進むと下気道炎といわれ、息切れや呼吸困難、高熱が出現し、肺炎となっていきます。
とにかく予防が最も大切です。そして、風邪症状が出たら早めの対処が必要ですから、すみやかに担当医に連絡できるようにしておきましょう。