こんにちは。本来ならば、さまざまな春のイベントに胸躍らせるこの時期なのに、外出を自粛し、最大限の感染防御を心がける日々をお過ごしのことと思います。それゆえ、決して健康的とは言えない生活になりがちで、疲れや不安が蓄積している方もいらっしゃると思います。われわれ医療従事者も、自らの健康維持と、医療継続のための感染防御を心がけています。このような状況ですが、なんとか穏やかに、そして健やかに、今を乗り切る方策を考えてみたいと思います。
※このコラムは2020年4月3日時点の情報に基づいて書かれたものです。

手洗いの重要性とマスクの取扱いについて

前回のコラムでお伝えした、新型コロナウィルスを含む飛沫・接触感染を予防する方法、手洗い、うがい、マスク、栄養と睡眠で免疫力アップは、現在も有効です。三寒四温の季節を経て美しい桜の季節となった今、新型コロナウイルス感染陽性者数は増加のスピードが上がり、感染源が特定できない方が多くなりつつあります。こうした状況で、効果的な感染予防のために何に気を付けることが大事でしょうか。それは、手洗い第一!です。

ご存じの通り、マスクが不足する状況が続いています。でも、自宅の外で出会う人々はマスクをしている方がほとんどです。この事実は、私たち日本人の他者を思いやる気持ちそのものが無意識にも現れていると感じます。つまり、マスクは感染者の飛沫を拡げないために有効なのです。一方で、各種マスクは手作りも含めて比較すると、実は性能が随分違います。(下図参照)

マスク種類
提供:Dr KF Chau, Nephrologist, WTGF Medical Consultant, Hong Kong

マスクの種類については(一社)日本衛生材料鉱業連合会のHPも参照ください。

咳エチケットの一環として、すなわち、自分が飛沫を飛ばさないこと(図によるとスポンジ製以外は有効でしょうか?)、現在のように感染症が流行している際に人と会うときに相手に安心感を与えることや、手が顔に行かないようにすることのためには、どのマスクも有効です。一方、エアロゾルとなって浮遊したウイルスは、密閉環境、密集場所、密接場面でなければ感染のリスクは低くなると考えられ、理論上は不織布性のサージカルマスクをしていればウイルスは遮断されマスクの外側で留まっています。しかし、マスクが感染者の飛沫の侵入を防いでくれたとしても、そのマスクを手で触ると・・・、もうお分かりですね。マスクに付着したウイルスが、手についてしまうことになります(決して頻度は高くないとは思いますが)。その手を目、鼻、口にもっていく前に、手洗い第一!です。人込みで使用したマスクは、耳輪だけをもって外し、何にも触らないように捨てるか、確実な除菌を心がけましょう。マスクでは遮蔽(しゃへい)が心配だと感じる方や、実際に目を含めた遮蔽を必要とする方には、フェイスシールドをお勧めします。

以前より咳エチケットも普及し、会食もライブや屋形船も控えるようになった今、感染している人が飛沫を人に向かって飛ばすことは、極めて少ないと思われます。しかし、症状のないPCR検査陽性の人からも感染するという報告を重視すると、残念ながらウイルスの感染力は「強い」と考えたほうがよさそうです。つまり、咳、鼻水、くしゃみ以外の、おしゃべりだけで排出される少量の唾液でも、それが付着したところを触ると、感染リスクとなりえます。そして、誰がウイルスを排出しているかも、とても分かりにくくなっています。ということは、自宅などのクリーンだと考えられるエリア以外では、いつも接触感染予防が一番大事、すなわち手洗い第一!です。

聞けば聞くほど気が重くなるような、神経質になる表現をわざとしたのは、外出時にマスクをしていれば安心、というわけにいかないことと、完全にウイルスに接触しないでいることは至難の業だと思っていただきたいからです。持病のある方や免疫抑制薬を飲んでいる方が感染した場合の重症化が心配されるとすると、感染者数が増加の一途である今この時に限っては、外出は極力控えることをお勧めします。体力の維持を考えれば、周囲5m以内に人のいない環境でウォーキングをしたりすることは、感染のリスクを上げるとは考えにくいのではないか、と言いたいところですが、街中に住んでいる人々にとって、外出中に誰にもすれ違わず、何にも触れないことは不可能ですよね。そのため、体力維持のための運動は、家の中で筋トレ、脳トレ、ストレッチなどをやる方がよいでしょう。そして、お勉強や家族サービスの家事手伝いなどなど、家の中でもやることは結構あるのではないでしょうか。

でも、もし、咳、痰、発熱を自覚したら、速やかに担当医に連絡できるようにしておきましょう。新型コロナウイルス感染では、咽頭痛や鼻水などの風邪症状は15%程度と少ないという報告がある一方で、2日~数日で下気道炎、すなわち、息苦しさや痰のある咳といった呼吸困難症状、高熱に進行する報告も見られます。外出や予約外受診がためらわれるかもしれませんが、おかしいな、昨日より明らかに違う、と感じたらすぐに病院に連絡し、対応を確認した上で、速やかな受診が強く望まれます。とはいっても、感染した多くの人は軽症か、症状なく過ぎてしまうともいわれています(ちょっとほっとしますが「だから困るんや」と嘆く筆者)。

そうはいっても、どうしても外出が必要な時もありますよね。ぜひ忘れないで、水際対策として、手についたウイルスを口、鼻、目にもっていかないように心がけ、こまめに石けん(ないときはアルコール)で手洗いをするようにしましょう。

手洗い第一!