ひょっとこ踊りで笑顔を運んで

臓器提供後、最もうれしかったことはどのようなことでしたか。

君枝さん:
移植後は、娘の笑顔が見られるようになり、水分や食事制限なしの自由な生活ができるようになって、仕事や家族旅行もできるようになりました。うれしいことは、数え上げればきりがありません。
私達は担当医の先生を信じて、「私も娘を助けるし、先生にも助けてもらう」というその気持ちで先生にお任せしました。おかげさまで手術も成功しました。現在こうして元気で自由に生活ができるのも、担当医の先生や看護師の方々のおかげだと思い、本当に感謝、感謝です。

念願だった家族旅行

娘さんとの関係は、臓器提供前後で変わりましたか。

君枝さん:
苦しい透析を続けている19年間は、つまらないことでしょっちゅう喧嘩をして、娘との関係がギスギスしていたこともありました。お互いにキリキリして、心の余裕がなかったのですね。
でも、移植をして、食生活や社会生活が自由になってからは、家族が皆明るくなり、笑顔も出るようになりました。娘は、「無理をしないでね」と言って私の体を労わってくれます。とても優しくなりましたね。私は運転ができないので、今は娘が車で買い物に連れて行ってくれることも多いです。娘とはいつも友達みたいにお喋りをしています。若い人の話や、先生や看護師さんの話なんかもして、ワイワイやっています。怒ったり笑ったりしてね。

臓器提供後、新たに始めたことや、打ち込んでいることはありますか。

君枝さん:
無理なくできるウォーキングから始めて、地域の周りの草花を見つけては持ち帰り、水彩画の絵手紙を描いています。また、友達と旅行をしたり、パークゴルフやパターゴルフも始めました。サークル活動にも参加して、日本舞踊やひょっとこ踊り、カラオケなどを楽しんでいます。

具島さんの活動

メッセージ

臓器提供してよかったですか。

君枝さん:
はい、よかったです。ドナーになって、娘の元気な姿と笑顔を見ることができ、長い間の心配もなくなり、何だか肩の荷が下りたような気持ちで、「これから何でもできるな」と思いました。家事はもちろんですが、お日様の下で、家庭菜園(無農薬野菜)のための畑を耕したり、木の剪定をしたり、たまには大工仕事もやったりと、毎日元気に楽しく生活 しています。

臓器提供を検討している友人から相談されたら、提供を勧めますか。

君枝さん:
私の体験談をしっかりとお話しして、理解していただいた上で、絶対に勧めます。やはり家族が明るくなるのが一番ですから。

現在、移植手術を控えている、または移植手術を検討しているレシピエントやドナーの方へメッセージをお願いします。

具島さんと真里子さん

君枝さん:
移植手術という大きな決断を迫られることは、当然、不安や心配も大きいものだと思います。でも、愛する家族の苦しみは、1日でも早く取り除いてあげるべきだと思います。
現在は、私たちが移植手術を受けた10年前より、さらに医療技術も進み、血液型不適合移植の場合でも、脾臓摘出の必要も無く、レシピエントへの負担も減っていると思います。そしてドナーも4~5日で退院でき、その後も何でもできます。 ドナーもレシピエントも、お互いの気持ちの一致が一番大切ですので、ご家族でよく話し合い、より良い選択をしてください。また、担当の先生に納得のいくまでお話を聞いて、先生方を信じて託すことが大切だと思います。