前回は、免疫抑制剤との相互作用④ 他科受診の際の注意点<前編>として、移植後の内科受診、耳鼻科受診の際に処方されることがある薬について解説いたしました。
2回目の今回は、歯科、眼科、整形外科、婦人科受診について解説します。

尚、注意が必要な薬が処方された場合には、服用前に、移植医、薬剤師にご相談の上、指示に従うようにしてください。
また、移植後間もない患者さんや、移植後月日は経過していても、体調の変化がある患者さんの場合は、近医受診で済まさないほうが良いことがありますので、注意が必要です。

⑥ 歯科を受診した場合

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■処方されることがある薬
抗生剤、解熱鎮痛抗炎症薬などが処方されることがあります。

■薬を処方された際の注意点
◎抗生物質
注意が必要ですので、前回の記事をご確認ください。(薬を正しく飲み続けるために【2】 ~免疫抑制剤との相互作用③ 抗生物質~

◎解熱鎮痛抗炎症薬
解熱鎮痛抗炎症薬の多くはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)という種類の薬で、その多くが腎臓に負担をかけます。患者さんの現在の腎機能に見合った適切な薬剤、服用量、服用回数にする必要があります。 NSAIDsの例として、ロキソニン®、ポンタール®、ボルタレン®などがあります。

⑦ ドライアイ、緑内障、白内障などで眼科を受診した場合

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■処方されることがある薬
ドライアイの改善、眼圧を下げる、白内障に対する点眼薬などが処方されることがあります。

■薬を処方された際の注意点
◎点眼薬
あまり心配はいりません。
注意点:免疫抑制剤の一つとして服用しているメドロール®、プレドニン®などのステロイド剤は、眼圧をあげる作用がありますので、服用している場合は、眼科医に服用していることを伝えておきましょう。

◎その他
閉塞隅角緑内障(へいそくぐうかくりょくないしょう)のタイプの患者さんは、抗コリン作用という薬効を持ついろいろな薬との相互作用がありますので注意が必要です。
抗コリン作用という薬効を持つものには風邪薬、抗ヒスタミン薬、排尿障害薬、心血管薬、抗うつ薬、鎮静催眠薬、排尿障害薬など多種多様です。一概にどれも使えないということではないので、医師、薬剤師にしっかりと確認、相談しましょう。

⑧ 腰痛、脊椎管狭窄症、末梢動脈疾患、骨粗鬆症などで整形外科を受診した場合

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■処方されることがある薬
鎮痛・抗炎症薬(経口剤、注射剤)、消炎鎮痛薬(貼付布、塗布剤)、血管拡張薬、ビタミン製剤、骨粗鬆症薬(経口剤、注射剤)などが処方されることがあります。

■薬を処方された際の注意点
◎鎮痛・抗炎症薬
鎮痛・抗炎症薬の多くはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)という種類の薬で、その多くが腎臓に負担をかけます。患者さんの現在の腎機能に見合った適切な薬剤、服用量、服用回数にする必要があります。 NSAIDsの例として、カロナール®、ロキソニン®、ボルタレン®、ハイペン®、セレコックス®、モービック®、ロルカム®などがあります。

NSAIDs以外の鎮痛薬に、リリカ®、トラムセット®がよく処方されます。リリカ®という薬は腎臓に負担をかけるので、患者さんの現在の腎臓の機能に合わせた用量を服用することが必要です。
トラムセット®は、薬の効果よりも先に悪心、吐き気などの副作用が現れることが多いため、一緒に吐き気止め(プリンペラン®)が処方されますが服用に問題はほとんどありません。またトラムセット®は配合剤でアセトアミノフェンというカロナール®の成分が入っていますので、カロナール®と併用される場合はアセトアミノフェンの量が多くならないように注意が必要です。

◎その他
骨粗鬆症のビスホスホネート製剤という種類のお薬は、腎臓に負担をかけるため、患者さんの腎臓の機能によっては使用を避けた方が良い場合があります。例として、ベネット®、アクトネル®、リカルボン®、ボノテオ®などいくつかの薬があります。

⑨ 月経不順、更年期症状、不妊治療などで婦人科を受診した場合

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■処方されることがある薬
ホルモン剤、漢方などが処方されることがあります。

■薬を処方された際の注意点
◎ホルモン剤
ホルモン剤は抑制剤と相互作用があるタイプのものがあります。
エチニルエストラジオールという卵胞ホルモンで、タクロリムス(グラセプター®、プログラフ®)、シクロスポリン(ネオーラル®)の血中濃度を上げてしまうので注意が必要です。
この成分の医薬品の例としては、プロセキソール®、プラノバール®、ヤーズ®、ルナベル®などがあります。また低用量経口避妊薬の多くにも、この成分が含まれています。

⑩ 保険対象外(自費扱い)のお薬の注意点

◎育毛剤(AGA:男性型脱毛症に関する薬)、ED治療薬(ED:勃起の機能不全に関する薬)
患者さんの腎機能によって用量の調節や服用を避けた方がよい場合があります。

◎低用量経口避妊薬
低用量経口避妊薬には、上記のホルモン剤のところに出てきましたエチニルエストラジオールという成分が含まれていますので、注意が必要です。
例としては、オーソ®、シンフェーズ®、アンジュ®、トリキュラー®、マーベロン®になります。

◎その他の薬
上記の他に、自己免疫疾患(例:リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病など)、甲状腺疾患(機能低下症、機能亢進症)、肝疾患(B型肝炎、C型肝炎など)、精神疾患、てんかんなどで医療機関を受診し、薬が処方されている場合は、個別に検討する必要があります。

市販薬については、鎮痛作用のある成分が配合されているものが多く、上記にも記載しましたが、鎮痛作用のある成分は腎臓の機能によって服用の用量調節が必要です。
薬も沢山のメーカーから、また1つのメーカーから複数種類出ているので、服用する前に薬の名前を薬剤師に伝え、確認してもらうと良いと思います。

重要
上記記載の注意が必要な薬であっても、医師の判断で使用するケースもあります。場合によっては免疫抑制剤の用量を調節しながら治療を行うこともあります。
主治医の指示に従い、自己判断で薬の服用をやめたり、服用量を調節したりすることはしないようにしましょう。