弟からの温かい申し出

その後、移植手術に向けて、どのように話が進んでいったのですか。

久野さん
私は6人兄弟(姉妹)なのですが、自分のすぐ下の弟が一番話しやすいので、弟に「こんな治療法があるのだけど」と、講演会で聞いた腎移植の話をしたのです。すると弟が「それであれば、俺が会社を定年退職して年金生活になったらあげてもいいよ」と言ってくれ、実際にそれから2~3年後に弟がドナーとなり、移植手術を受けました。

移植手術を受ける病院はどのようにして決めたのですか。

久野さん
姉が大阪に住んでおり、平野先生からも「親族がいるところの方が安心でしょう」と言われ、大阪医大で移植手術を受けることにしました。
移植手術の1カ月前くらいに入院して、術前の検査や治療を受けました。

移植手術は順調でしたか。

平野先生

平野先生
移植手術自体は特に問題ありませんでしたが、移植手術前の嚢胞腎の摘出は、癒着があったため時間がかかりましたね。

移植手術を終えた時の心境を教えてください。

久野さん
まず、弟は大丈夫かな、と思いました。でも、私が病室に戻って少しすると、弟が歩いて病室まで来てくれたので、もう歩けるのかとびっくりしました。弟は「何ともないよ」と言って、階段の上り下りをしていたので、本当に驚きましたね。

手術後の経過はどうでしたか。

久野さん
術後1週間くらいはお腹の傷が痛かったのですが、自分で歩きだしてからは痛みが無くなりました。ただその後、傷がなかなか塞がらず、術後は2カ月位入院しました。
また、透析を受けていた最後のころは尿が出ていなかったので、手術後、1時間に2回くらいトイレに行かなければならない状態が2~3日続いた時はつらかったですね。
退院後は特に問題は無く、とても順調です。

マンゴーが食べられる幸せ

移植前と移植後で、生活はどのように変わりましたか。

久野さん

久野さん
週に3回だった通院が月に1回になり、とても楽になりました。透析を受けた後は少し体がしんどかったのですが、今はそのようなこともないですし、自分の好きな時にどこにでも行けます。
また、水が飲め、果物、肉、魚など何でも食べられるようになり、本当にうれしいです。透析中は、お肉やお刺身などの魚がほんの少ししか食べられませんでしたので、全体の食事の量はとても少なかったですね。移植後、久しぶりに大好きなマンゴーを丸々1つ食べたときのうれしさと美味しさは、言葉では言い表せません(笑)。

移植後は、どのような生活を送っていますか。

久野さん
自分で食べる野菜を作ったり、小さい頃からの友達に会ったりと、穏やかで幸せな毎日を送っています。 また、大阪の姉のところに1週間くらい遊びに行ったりもしています。

ドナーの弟さんも元気にしていらっしゃいますか。

久野さん
弟も元気にしています。定年後にまた仕事を始めたようです。

平野先生にお伝えしたいことはありますか。

久野さん
平野先生は優しくて何でも話しやすく、本当にいつも感謝しています。これからもよろしくお願いします。

ドナーである弟さんへお伝えしたいことはありますか。

久野さん
弟のおかげで元気になることができ、本当に感謝しかありません。体も楽になり、今のところ大きな問題もありません。このまま弟からもらった腎臓を大事にして、いつまでも元気でいられるよう頑張っていきたいと思います。