名古屋第二赤十字病院 移植者インタビュー第3回目は、約3年前にお母様がドナーとなり、生体腎移植手術を受けられた、安田規章さんです。
生体腎移植手術までの道のりや、現在、愛腎協(愛知県腎臓病協議会)の青年部や、朋友会(名古屋第二赤十字病院 移植外科 患者会)で、移植に関してのご自身の経験談や、情報の提供活動をしていらっしゃる様子などをお聞きする事が出来ました。
安田さんが移植を受けるまでの経緯
- 1990年頃 蛋白尿を指摘される
- 2006年 腎不全・心不全の診断を受ける 保存療法開始
-
2008年初旬 血液透析導入
-
2008年下旬 生体腎移植手術
突然訪れた不調
はじめに、生体腎移植手術に至るまでの状況を教えてください。
安田さん:
2006年9月頃、仕事中に不調を訴え、帰宅後倒れて緊急入院をし、腎不全、心不全の診断を受けました。その後2006年後半から保存期療法を開始し、2008年春から血液透析を開始しました。
そして、2008年10月に生体腎移植手術を受けました。
打田先生:
安田さんの原疾患はIgA腎症ですね。診察の記録を見ると、当時の安田さんご自身のお話では、20歳の時に検診でタンパク尿を指摘されていたようですね。
安田さん:
タンパク尿が出た時に再検査はしたのですが、タンパク尿も、出る時と出ない時があり、当時は原因が分かりませんでした。
打田先生:
タンパク尿や血尿が出たり出なかったりする程度の状態ですと、腎臓の専門医でなければ、ほとんどの場合、「経過を見ましょう」という話になり、それ以上の検査は行わない事が多いですよね。
安田さんの場合も、20歳の時にタンパク尿を指摘されてから16年後の2006年、36歳まで病院に通わず、いきなり症状が出て倒れてしまったという事ですね。
安田さん:
2006年9月頃、仕事中に体調が悪くなった為早退し、その後、家に着くと気を失ってしまいました。数日様子をみて寝ていたのですが、後日の検査で判明したのですが、心不全(拡張型心筋症)になっており、横になって寝ることもできず、座位のままで睡眠を取っていました。その後も状態は良くならず、近くの医院で検査をしたところ、即入院しなさいと言われました。
打田先生:
よくあるケースなのですが、症状が出るまで診察を全く受けていなかったという事ですね。
無症状の、特に、医師から「経過を観察しましょう」と言われた時に、その解釈に困ります。その先生が責任をもって今後の生活指導をしていただければよいのですが・・・。実際は、患者さんご自身がその経過観察の意味する事を理解していて定期的に病院に行き、専門医の診察を受けていない限り、安田さんの様になってしまうケースをよく見かけます。
うちの病院に診察にいらっしゃった時には、既にIgA腎症と腎硬化症による慢性腎不全と診断され、血液透析を受けていらっしゃいました。
サードオピニオンを求めて
移植はいつ頃から考えていらっしゃったのですか?
安田さん:
保存期の時に腎不全の寛解を求め、セカンドオピニオン、サードオピニオンを求めて大学病院に伺いました。
セカンドオピニオンを求めて伺った大学病院では「透析をするしかない」と言われたのですが、サードオピニオンを求めて伺った大学病院で、腎臓内科の先生に「僕が君の兄だったら移植を勧めるよ」と移植手術を勧められました。
打田先生:
『ある大学病院の腎臓内科に行ったら、透析に入るしかないと言われ、別の大学病院に行ったら、「透析」と「腎臓移植」の両方の治療があるという事を教えてくれ、移植を勧めてくれた。』という事ですよね。
安田さんが大学病院に相談に行かれたのは、2007年頃の話です。何十年も前の話ではないのですから、大学病院の腎臓専門医が、腎不全の治療選択肢として透析の話しかしないというのは問題ですよね。
安田さん:
移植という方法があるのは分かったものの、献腎移植ですと、何年待つか分からないですし、生体腎移植は知っていたものの、健康な人の体にメスを入れるのは・・・、と思っていました。保存期でしたので、何とか治らないかと思い、自分なりに様々な情報収集をしていました。