自分が経験した素晴らしい移植医療を知ってもらうために

打田先生
安田さんは移植手術を受けられてから、熱心に腎移植の啓発活動をやっていますね。この様な啓発活動には移植前から興味があったのですか?

安田さん
透析になると聞いた時には、先生に「もう自分はやりたい事をやったから死んでもいい」と言っていました。一度は無くなったと思っていた命なのだから、移植後、自分で出来る事は何でもやっていこうと思いました。
 手術前からブログを始めて、情報を発信し始め、手術の時の写真も撮ってアップしていました。ブログは今でも定期的に更新しています。  

打田先生
ブログに対する反応は何かありましたか?

安田さん
今度移植をするのですが、というような相談の連絡はよく頂くようになりました。先日も私とは原疾患が違う方から相談を頂いたので、その方と同じ原疾患の方を私から紹介したりもしています。

術後は順調でしたか?何か変わった事はあったでしょうか?

安田さん
免疫抑制剤の服用開始後2週間くらいして血中濃度があがり、クレアチニン値も上昇したこともありましたが、腎生検を行い、拒絶では無く免疫抑制剤の量が多すぎる腎毒性腎障害だったという事が分かり、薬を減らした事はありましたが、現在は順調です。
服薬以外の話としては、移植手術後、扁桃摘出術(扁摘)を行いました。

打田先生
IgA腎症が原因で腎不全になった患者さんの移植腎は再度IgA腎症が発症することがよくあります。扁桃腺摘出術が再発防止に有効であることが報告されており、当院では、移植手術の半年から1年後に予防的な扁摘を行っているのです。

時間が自由に使える幸せ

手術後の生活はいかがですか?

安田さん
高校の頃は、ずっとサッカーをやっていて、大学でもテニスやゴルフをやっていました。スポーツは大好きでしたので、手術後はテニスを再開しました。特にスポーツをする時などは、脱水に十分気をつけ、水分は1日4Lくらい取っています。

打田先生
手術後、ドナーのお母さんに対しては、どの様に感謝の気持ちを示されましたか?

安田さん
最初は「ありがとう」と言ったのですが、その後は照れくさくて言葉では伝えられていません。ただ、移植後、母親と弟夫婦と自分で、初めて家族との海外旅行(フィジー)に行きました。

移植して一番良かった事はどんな事ですか?

安田さん
透析から解放されて、時間が自由に使える事になり、普通に、自由に、旅行が出来るようになった事です。
以前、フランス語学科に通っており、カナダに留学した事もありましたが、現在は大学の医療通訳のスペイン語講座にも通っています。

家族で行ったフィジー旅行の写真

これから移植を受ける方へ

今、熱中していることや、将来の夢はありますか。

安田さん
現在、全腎協(全国腎臓病協議会)の県の組織、愛腎協青年部に所属しているのですが、透析患者さんの多くが移植医療について知る事が出来ないので、その方々に移植に関して伝え、理解して頂く活動をしています。 また、朋友会(名古屋第二赤十字病院 移植外科 患者会)で、レシピエントの広場の世話人もさせて頂いています。自分自身も、入院した時に移植の情報が得にくく、経験談を聞く事も出来なかったので、打田先生と朋友会会長の中井真一さんに相談し、この様な場を持つことになりました。月に1回第3土曜日の13時から会を設けており、15人~20人位の移植を控えた患者さんや移植直後の患者さんの疑問・不安に、私も含めた移植経験者が、自らの経験をお話しています。オブザーバーで移植外科の先生方やレシピエントコーディネーターにも参加頂き、コメントも頂いています。
あと、ドナーである母が一番うるさく言うのが、「早く結婚しろ!」という事ですので、「結婚相手を探す事」も現在の夢です(笑)。

愛腎協の勉強会・全国大会の写真

これから移植する方へのメッセージをお願いします。

安田さん
名古屋第二赤十字病院で移植手術をされた患者さんは皆さん、非常に安心して手術を受けられたと言っています。
どの病院を選ぶかというのは大変重要な事だと思います。実績のある、信頼出来る病院を選べば、本当に安心して手術も受けられると思います。
自分自身で能動的に情報を取りに行き、信頼出来る病院、信頼出来るお医者さんを選んで欲しいと思います。

今後の移植医療に期待する事はありますか。

安田さん
自分は生体腎移植でしたので、生体を傷つけない移植手術を望んでいます。再生医療やIPS細胞など、更なる医療技術の進歩を望みます。