母、叔母からの愛情
その後、何故、生体腎移植手術を受ける事になったのですか?
安田さん:
透析導入に向けて、シャントを作る為に入院しなければならないという話を母にしたところ、母親から 「移植をしなさい」と言われました。
母にはその様に言ってもらったものの、自分の中では非常に葛藤がありました。また、母には高血圧があったのでその点も心配でした。
先生、高血圧のある患者さんがドナーになる事は出来るのでしょうか。
打田先生:
原則としては、将来腎臓を悪くするような全身疾患を持っている方は、ドナーにはなれません。ただ、高血圧そのものも、コントロール可能な程度の高血圧であれば腎提供は可能です。提供予定者の体の状態からだけではなく、年齢 ; 腎提供後片腎で過ごさなければならない余命年数なども加味し総合的に判断するようにしています。杓子定規に、少しでも体に異常がある場合はドナーになれないとは考えてはいません。
安田さん:
実は、母が高血圧でドナーになる事が難しいかもしれないという話をしていた際、全く異常が無かった叔母が「私の腎臓を提供してもいい」と言ってくれました。母親からドナーになってくれるという話を頂いた時も非常に申し訳ない気持ちでしたが、叔母からの話を頂いた時も本当に申し訳ない気持ちで一杯でした。
打田先生:
伯父さん、叔母さんからの腎臓提供も最近増えていますね。また、伯父さん、叔母さんといった血縁者からの移植ではありませんが、3年くらい前に20代前半の男性が生体腎移植手術を受けられた際、実の両親は医学的に適応がなく、また奥さんも乳飲み子を3人も抱えておられたため、奥さんのお母さん(義理のお母さん)がドナーになってくれたという話もありました。生体腎移植では三親等内の姻族からの提供も認められています。
安心して移植手術へ
その後、移植手術に向けてどの様にお話が進んだのでしょうか?
安田さん:
2008年2月、もしくは3月頃だったと思います。シャント手術のための入院中に、打田先生に移植の話を伺いました。先生からは、透析と違い、移植はかなりの利点があるという事をお聞きし、私からはドナーとなる予定の母の高血圧症が心配でしたので、その点に問題が無いかを伺いました。その時に、「ドナーとなるためには、問題がないかどうかしっかりと術前の検査をしますし、術後も外来でしっかりとフォローするので、普通の方以上に健康な方も多くいらっしゃいます。」との説明を受けました。
打田先生:
名古屋第二赤十字病院の腎移植チームは移植外科医と内科医から構成されています。ドナーは、手術後定期的に、毎年ズーッと、例え身体に異常がなくても通院していただいています。
ドナーは一見健康そうに見えますが、実は、本来2個ある腎臓が1個しかなく、例えればスペアタイヤのない乗用車と同じなのです。残りのタイヤがパンクしたら全く走ることができなくなってしまいます。つまり、通常の患者さん以上に注意を払って診療を行い、治療介入の時期や程度などの閾値を低くした診療を行わなくてはなりません。ドナーの定期診察は、この様な事情に精通した移植内科医が担当しますから、安心して任せてください。
移植手術が決まった時の心境はいかがでしたか?
安田さん:
ドナーの母の持病については少し心配でしたが、自分の手術については、全く心配はなかったです。全国有数の移植病院でありましたし、先生方の説明を受け、不安なことも全くありませんでした。
移植手術が決まってから手術までの期間はどのくらいでしたか。またその期間の生活の様子はいかがでしたか?
安田さん:
2008年3月に移植の説明を受け、10月を手術予定とし、術前の検査を受けました。
2008年4月に透析導入となったので、月・水・金は透析で、透析後は血圧低下などがあり、ほとんど家で寝ている状態でした。
支えてくれた人への感謝
移植手術を終えた時の心境を教えて頂けますか?
安田さん:
透析で、かなり体調不良を訴えていたのですが、移植後翌日に歩くことも可能となり、体調もほとんどすぐにと言っていいほど良くなり、すごくうれしかった記憶があります。
ドナーへの想いを聞かせてください。
安田さん:
高血圧があるにも関わらず、ドナーになってくれた事に、本当に感謝しています。
担当医への想いを聞かせてください。
安田さん:
移植医療についての知識があまり無かった為、数々の単純な質問もさせて頂きましたが、それに対してもとても丁寧に答えくださり、不安が一掃できました。とても感謝しています。本当にありがとうございました。