頂いた恩を返していくために

渋谷先生にお伝えしたいことはありますか。

小泉さん
免疫抑制剤のコントロールの他、全身の健康管理にも配慮をしていただいており、感謝しています。「何かあれば、渋谷先生に相談すれば大丈夫」という、安心感があります。

お母様への思いを教えてください。

小泉さん
母には長生きをしてほしいと思っています。そして、母に恥じない生き方や仕事を心がけています。移植をした時に、母から、「人の痛みが分かる弁護士になりなさい」と言われました。ですから、そうなれるよう努力をしています。当たり前のことでしょうけれども、「真面目に仕事をする」ということを意識していますね。どこかで、「頂いた恩を返していかなくては」と思っています。
移植を受ける機会があり、移植後元気に生活されている方も多くいらっしゃいますが、やはり、移植を受けたくても受けられない人もいらっしゃると思うので、そのような人たちに直接何かをしてあげられなくても、どこかで間接的にでも返していこうと意識しています。

移植後、約18年が無事に経過した今の心境はどのようなものですか。

小泉さん
現在何も問題がないだけに、逆に不安もあります。移植した時には、「ああよかった、これで60歳くらいまで仕事ができたらいいな」と思っていただけでしたが、実際53歳になってみると、「いったいこの先、あと何年この腎臓がもつのだろう?」という漠然とした不安があります。ですから、移植後30年近く移植腎がもっている方のインタビューをMediPress腎移植の記事で読んだ時には、少し勇気付けられました。

現在、移植手術を控えている、または移植手術を検討しているレシピエントやドナーの方へメッセージをお願いします。

小泉さん
手術自体は、術後にベッド生活が少し続くので一時的につらいと思いますが、「必ず良くなる」と信じて頑張ってほしいと思います。

河野コーディネーターからもメッセージをお願いします。

河野コーディネーター
小泉さんのように、ドナーの方を思いやり、感謝の気持ちを持って自己を振り返ることができるというのは、とても大切なことだと思います。そのような気持ちを持っていらっしゃる方は、やはり体の管理もきちんとできている方が多いと思います。

移植後約18年たって、フルマラソンを走り、仕事も元気に十分にできている人というのは、移植者のエースランナーですよね。これから移植を受ける方や受けたばかりの方はまずはぜひそこを目指したいですね。最後に、先生からもメッセージをお願いします。

渋谷先生
約18年の間、移植腎がしっかりともっているということは、普段から節制や自己管理がきちんとできているということです。基本的なことですが、薬を忘れずに飲んだり、定期的にきちんと受診をするということはとても大切なことです。
あとは、ご自身でセーブして無理をしないようにすることも大事です。少し数値がおかしくなったら、気を付けて直していく。そうやって自己調整していくということが大切です。やはり、ドナーの方の一番の思いは、「腎臓が長持ちして元気で健康に生活してほしい」ということですから、それに応えてほしいと思いますね。そのためにはやはり、薬をきちんと飲むこと、生活習慣病にならないようにすること、がんや感染症にかからないようにすること、この3つが大事だと思います。

集合写真