高知医療センター レシピエントインタビュー第3回目は数年前に献腎移植を受けられた、吉田誠児さんです。吉田さんは51歳のころに腎不全との診断を受け、その3カ月後には血液透析導入となり、約10年の透析期間を経て献腎移植手術を受けられました。移植後、仕事やお父様の介護ができることに心から感謝し、ドナーの方への祈りを忘れず、充実した日々を過ごしていらっしゃる吉田さんから、さまざまなお話をお聞きすることができました。

吉田さんが移植を受けるまでの経緯

  • 51歳(3月頃) 痛風と診断される 背中の痛みや激しい頭痛が起こるようになる 腎不全と診断される
  • 51歳頃(6月頃) 血液透析導入
  • 60歳頃 献腎移植手術

血液透析導入へ

病状が出始めてから移植に至るまでの状況をお聞かせください。

吉田さん
51歳のころに痛風と診断され、服薬治療を始めました。痛風の発作が繰り返し起こるようになってからは、尿の出が悪くなり、背中や顔面の痛み、激しい頭痛が起こるようになりました。そのため、耳鼻科、内科、脳外科とさまざまな科を受診したのですが、原因が分からず、最終的には泌尿器科を受診して腎不全と診断されました。しかし、その時にはすでに手遅れであり、診断から3カ月後には血液透析導入となりました。その後、約10年の透析期間を経て、献腎移植を受けました。

痛風と診断されるまでは、大きな病気をすることもなかったのでしょうか。

吉田さん
50歳ごろまでは大きな病気にかかったことはありませんでした。ですから、背中の痛みや頭痛が始まったころは、疲れているのだと思い、症状を和らげるため、サウナに行ってマッサージをしたりしていました。でも、やはり、「これはちょっとおかしいな」と思い、いろいろな科で診察を受け、最終的に泌尿器科で腎不全と診断された時には、突然のことでショックとしか言いようがありませんでした。頭が真っ白になりましたね。

先生、吉田さんのように、診断を受けた時には、すでに末期腎不全となっている患者さんも多いのですか。

渋谷先生
そうですね。中には腎不全がかなり進行するまで特に大きな症状がなく、気付かない方もいらっしゃいます。


吉田さん
腎不全と診断された時にはもう手遅れでしたから、もう少し前に知識があれば、透析導入までの期間を少しは延ばせたかもしれません。痛風と診断された病院では、「たいしたことはありません。薬を飲めば大丈夫ですよ。」と軽い感じで言われたので、痛風の薬も、症状が出た時に飲むくらいでした。そして発作が出なくなれば、薬を飲むのを止めていました。

そして、腎不全と診断されてから3カ月後に、血液透析導入となったのですね。

吉田さん
そうです。腎不全と診断されてから2カ月ぐらいは透析をせずに頑張ったのですが、だんだん水が溜まり、息苦しさなどの症状が出るようになりました。なんとか透析をせずにいられないかと思い踏ん張ったのですが、それがかえって良くなかったのかもしれません。

透析治療については、ご存知だったのですか。

吉田さん

吉田さん
いいえ、どのような治療なのかも全く知りませんでした。透析導入する前日に、透析室で説明を受けました。シャントは、「先に作製しておいた方がいい」と言われていたため、透析導入の2週間くらい前に作っていました。

透析治療は順調でしたか。

吉田さん
最初の1~2年は大変でした。水分の引き過ぎで血圧が急激に下がり、失神することもありました。その後はかなり節制し、水分コントロールを少しずつ覚えていきましたので、だんだん楽になりました。落ち着いてからは、透析による拘束時間はあるものの、治療自体は順調でした。

透析導入後も、お仕事はされていたのですか。

吉田さん
はい。透析のない日は、昼だけですが、ラーメン屋をやっていました。さすがに体力的にしんどいので、夜はやっていませんでしたね。

献腎移植の希望登録へ

献腎移植に関しては、いつ、どのようにして知ったのでしょうか。

吉田さん
透析導入後に、いろいろな本を読んだり、透析病院の先生からお聞きしました。そしてすぐに献腎移植希望の登録をしました。その時は、「待機期間は平均14年くらいです」と言われたのですが、実際の待機期間は約10年でした。

献腎移植希望の登録後、移植についてどのような勉強をしましたか。

吉田さん
図書館や知り合いから、関連する本を借りて読み、渋谷先生の腎移植の勉強会にも2度ほど行きました。

渋谷先生は、勉強会はどのくらいの頻度で開催されているのですか。

渋谷先生

渋谷先生
以前は、高知県腎バンク協会が主催で、年2回ほど腎移植の勉強会をしていました。最近は高知移植者友の会と高知県腎バンク協会が共催して、中学校で「命の授業」というようなテーマで、臓器移植と臓器提供の話をしており、臓器移植の普及啓発活動をしています。

献腎移植希望の登録後、特に意識して気を付けていたことはありましたか。

吉田さん
きちんと透析に通い、薬をかかさずに飲みました。あとは、風邪を引かないように注意をしていました。

先生、こちらの病院では、献腎移植待機者向けの外来もやっていらっしゃるのでしょうか。

渋谷先生
当院では、献腎移植待機者の方に対して、基本的には全員、年2回の診察をしています。高知県で登録している方は、皆さん当院に来られるのですが、全部で60数名ですので、すべての方の診察をきちんと行うことができます。


吉田さん
移植希望の登録後、高知医療センターの外来で、定期的な診察があり、その場でいろいろな説明をしっかりとしていただけたので、とても安心感がありましたね。