機会をいただいて

献腎移植の連絡を受けた時は、どのようなお気持ちでしたか。

金内さん

金内さん
実際に移植を受けるまでに一度連絡をいただいたことがありました。その電話は夜中の2時ごろにありました。その時は4番目か5番目の候補だということで、「明朝、電話がなければあきらめてください」と言われました。
それから2カ月くらいして、今度は就寝前に1番目の候補だということで電話をいただきました。すごく緊張して手が震え、「私でいいんですか?私より若いお子さんが待っているなら、その方に話を……」とお伝えしましたが、「金内さんが一番若いですよ」と言われ、お受けすることにしました。
私は当時から日本経済新聞に『金太夫の博多有情』という連載の仕事を持っていましたので、編集部に連絡し、翌日の夕方までにとりあえず2週間分の原稿を準備し、病院で仕事ができるように原稿用紙を持って入院しました。

北田先生から献腎移植の連絡をしたときには、どのような反応をする方が多いですか。

北田先生
まずは連絡がつくかどうか不安なこともありますね。特に金内さんが移植を受けたころは皆さんが携帯電話を持っていたわけではないと思うので、連絡を取るのも大変だったと思います。多くの方がなかなか電話はかかってこないだろう、と思っておられますので、驚かれますね。考える時間もないことが多いですから、「頭が真っ白になった」というような方も多いようです。


金内さん
連絡をいただいた時には、一体どうしたらいいのか、何を持っていったらいいのか、まったく分からず動揺しました。とりあえず入院準備をして、翌日の夕方に病院に入り、19時か20時くらいに最後の透析を終え、23時くらいから手術が始まりました。

移植手術を終えた時のことは覚えていらっしゃいますか。

移植後の入院

金内さん
手術後は同じ体制でずっと寝ていなければならず、ほとんど体を動かせなかったので、傷口の痛みより、腰の痛さが苦痛でした。手術後、3日目でやっと立ってもいいという許可をいただき、5日目に歩きました。

先生、現在は手術後、どのくらいの期間安静が必要なのですか。

北田先生
施設によっても異なると思いますが、手術後丸2日間は寝たままの状態でいてもらいます。それが一番きついとおっしゃる患者さんも多いですね。
その後3日目で立ってもらい、4日目から歩いてもらいます。


金内さん
手術後、腰が痛くて何日も眠れなかったので、幻覚を見てしまいました(笑)。天井がどんどん落ちてきて、その次は自分がどんどん上がっていくという幻覚や、同じ夢を3回くらい見たりしました。

手術後はどのくらいの期間入院しましたか。

金内さん
当時は1カ月半入院しました。術後の経過は順調でしたが、退院3日後に左手首の血栓が痛み出し、再び入院して2週間後に退院しました。

現在は手術後、どのくらいの期間入院するのですか。

北田先生
これも施設によって異なると思いますが、生体腎移植の場合は尿がすぐに出ますので、入院期間は短い人で1週間、長い人で2週間、平均すると大体10日間くらいです。
献腎移植の場合はすぐに尿が出ないことも多く、入院期間は長くなります。約1カ月といったところでしょうか。

手術後の生活で困ったことはありましたか。

金内さん
約15年間、おしっこをしていなかったので、手術後尿が出るようになってからは、1時間に5,6回もよおすようになったのですが、トイレに行っても出ないという状態が1週間以上続きました。完全に落ち着くまでには1カ月くらいかかり大変でした。
今でも朝方は漏れそうな感じがしてトイレに行きます。どうしても朝4時~5時ごろに起きてしまうので、そこから眠れなくなってしまうことが多いですね。


北田先生
透析期間が長い患者さんは、膀胱が小さくなっていますので、移植後最初のころはすぐに膀胱がいっぱいになって、排尿回数も多くなります。ただ、時間とともに落ち着き、膀胱も元の大きさに戻ります。


金内さん
あとは、私は午前中に透析をしていたので、移植後いきなりその時間帯が自由になり、最初は何をしていいのか分からず戸惑いました。午前中に透析を受けて、午後から仕事をするというリズムが出来上がっていたので、移植後最初のころは、午前中は気分が乗らず、ぼーっとしてしまうことも多かったです(笑)。今はもうすっかり慣れたので、どの時間帯でも楽しく仕事をしています。


仕事中の様子