今まで血液透析を行っていた患者さんは透析日は入浴を控えなければなりませんでした。腹膜透析を行っていた患者さんはチューブがおなかに入っているため、十分注意して入浴する必要がありました。腎移植後は温泉に入浴し、ゆっくりと楽しむことができます。しかし腎移植患者さんに適した温泉の条件があるので十分注意してください。

腎移植患者にとって良い温泉の条件
・ レジオネラの検査に合格している。
・ 源泉かけ流しの温泉を選ぶ。
・ 循環ろ過式のお風呂は避ける。
・ ジャグジー、打たせ湯、気泡発生装置がない。
・ 清潔で掃除が行き届いている。

腎移植患者のみなさんは拒絶反応を起こさないために免疫抑制薬を飲んでいます。そのため、ウイルスや細菌の感染症になりやすいことは、おわかりだと思います。多くの人が入る大きな風呂に入浴をすると膀胱炎になると思っている人もいますが、よほど汚い人が多く入浴しており、お湯の入れ替えもないお風呂以外はそのようなことは決して起こりません。

温泉で腎移植患者さんがかかってしまうこわい感染症はレジオネラ感染症です。レジオネラ菌は39度で繁殖し、浴槽や配管の中でバイオフィルムを作ると消毒できなくなる特性があります。循環装置がついているお風呂では掃除がいきとどかないとレジオネラ菌が繁殖します。レジオネラ菌がいるお湯がジャグジー、打たせ湯、気泡発生装置で霧状になり空中に飛ぶとそれを吸い込んだひとは肺炎を起こすことがあります。温泉のお湯を飲んでも感染はしません。腎移植患者さんがレジオネラ肺炎になると重症化し死亡することも多くあります。知識がないために温泉に入って死んでしまったのでは移植を受けた意味がありません。

源泉かけ流しの湯量が豊富な温泉では、新鮮なお湯が次から次へとわき出て、流れ出るため、レジオネラは繁殖しにくいのです。そのため腎移植患者さんは①レジオネラ菌の検査に合格している検査証がある、②源泉かけ流し、③ジャグジー、打たせ湯、気泡発生装置がない、④清潔で掃除が行き届いている。このような条件にあった温泉を選ぶことが安全です。
温泉に入ると汗をかき、脱水になりやすいため、入浴前後には十分な水分をとることを忘れないでください。

腎移植を受けた後は安全な温泉でゆっくりリラックスして楽しんでください。