花粉症は、空中に飛んでいる植物の花粉に対して過剰に免疫反応、すなわちアレルギー反応を起こすことです。腎移植患者さんは、免疫抑制剤を飲んでいるために花粉症の症状はむしろ軽くなると一般的には言われています。しかし、腎移植後に花粉症が全くなくなるわけではありません。花粉症に主にかかわるIgE抗体は、腎移植後にあまり問題となることはありません。逆に腎移植で問題となるIgG抗体は花粉症ではなんら問題を起こすことはありません。

ただ、ここで注意すべきことは花粉症のお薬です。

花粉症のお薬の中には、プログラフ、グラセプター(タクロリムス)やネオーラル(シクロスポリン)と一緒に服用すると、体内でのそれぞれの薬の濃度に影響がでる薬もありますので、花粉症の薬をもらうときには、その点をお医者さんに確認したほうがいいと思います。しかし、開業医の耳鼻科の先生の殆どは臓器移植について知りません。

薬剤の代謝酵素(薬剤を体内で分解する酵素)が免疫抑制剤と共通であると、薬剤の分解速度が変化し、体内での濃度が変化することが考えられます。いくつか具体的にこの代謝酵素が共通であることが知られている薬剤があるのですが、公に相互作用(分解酵素が同じため薬剤の分解速度に変化があること)ありと発表されていないため、ここではあえて記載いたしません。従いまして、対応策としてはこのようなアレルギーの薬を貰って飲む場合は、移植医に相談して内服を始めるようにしましょう。また、飲み始めはやや頻回に外来受診し、プログラフ、グラセプターや、ネオーラルの濃度が変化しないか確認するのも確実な方法です。

※個々人の症状や年齢などにより、注意する点は異なります。「MediPress」は患者さんが病気や薬について一般的な知識を得るための参考資料であり、必要最小限の情報が記載されています。個々の患者さんの病態や症状に合わせた内容ではありませんので、記載された情報がどの患者さんにも当てはまるというわけではありません。
薬の飲み方や症状など、わからない点がある時は自己判断をせず、必ず主治医や専門医に直接ご相談ください。