ARBの増量によっても降圧効果が得られない場合、他の薬剤の追加が必要となります。
この場合、よく使われるお薬は、カルシウム拮抗薬といわれるものです。このカルシウム拮抗薬には非常に多数の種類がありますが、腎移植後に使用するのに都合のよいものを選ぶことになります。
中には免疫抑制剤との併用により免疫抑制剤の濃度に影響する高血圧治療の薬剤もかなりたくさんあります。しかし、免疫抑制剤の血中濃度に影響しそうな薬剤を全て排除することも難しいところです。
さらに、困ったことに表にあるようにすでに血中濃度に影響がおこりそうなことが知られている薬剤以外にも血中濃度に影響を与えそうな薬剤がありそうなことです。
多くの医師、薬剤師は、医学文献(*)上報告がないことから、そのような薬はないと考えているようですが、これはかなり怪しいと思われます。
たとえば、サイクロスポリンやタクロリムスなどは体内に吸収され免疫抑制薬としての作用を発現したのち肝臓のある特殊な酵素で速やかに分解されます。この酵素が多くの他の薬剤(たとえばカルシウム拮抗薬など)の分解酵素と同じであることから問題が生じます。二つのお薬が一つの酵素で分解されるとうまく分解が進まず免疫抑制薬の血中濃度が高くなったり、逆に酵素が働きすぎて血中濃度が下がるもの(たとえば抗結核剤などの一部)もあるのです。
さて、こうなるとちょっとお話がややこしくなります。すなわち、免疫抑制剤と分解酵素が同じで免疫抑制剤の血中濃度に大きな影響を与えそうな薬剤でも降圧剤、心臓のお薬などのようにやめられないものもあります。免疫抑制剤をのんでいる患者さんはどのようにすればいいのでしょうか?
結局は、プログラフやネオーラルの血中濃度を注意深く観察しながら、濃度に極端な変化がおきないか注意して免疫抑制剤(ネオーラルやプログラフ)の内服量を調節する必要があります。
医学文献:医学研究の成果を医学雑誌に投稿し発表するが、これらの研究結果について記載された研究論文のことを広く医学文献という。