腎移植後の食事管理は、大きく分けて2つの観点で行います。1つ目は、保存期腎不全患者さんと同様の水分、エネルギー、たんぱく質、食塩、カリウム、リンなどの管理です。2つ目は免疫抑制薬内服中に注意が必要な食事と薬の飲み合わせ、生ものなどの注意です。さらに糖尿病などの合併症がある患者さんは、専門医や管理栄養士の指導が必要です。
本稿では、1つ目の「保存期腎不全に対する食事管理」について成人の腎移植患者さんを念頭に解説します。
食塩
日本人の多くが食塩摂取過剰です。食塩制限により尿たんぱくは減少します。食塩を制限すると血圧も低下します。それだけでなく降圧薬を内服して血圧が管理されている患者さんでも、そこから食塩制限を守るとさらに尿たんぱくは減少します。
日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」では、ほとんどの腎移植患者さんがあてはまる慢性腎臓病ステージ3~5では、1日食塩摂取量は3g以上6g未満が推奨されています。当院の外来腎移植患者さんで調査すると、6g/日未満の患者さんはたったの2割で、6g以上摂取していた患者さんの割合は80%以上でした(図・外来腎移植患者さんの1日食塩摂取量)。
たんぱく質
慢性腎臓病患者さんの腎保護効果を期待して、たんぱく質の摂取制限が行われます。たんぱく質は重要な栄養素ですので、医師や管理栄養士の指導の元に管理を行います。
日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」では、腎機能の指標である糸球体濾過量(GFR)が多くの腎移植患者さんが当てはまる44ml/min/1.73㎡以下の慢性腎臓病ステージ3b~5では、1日たんぱく摂取量は体重1kg当たり0.6~0.8gが推奨されています。当院の外来腎移植患者さんで調査すると、0.8g/kg体重/日未満を守れていた患者さんの割合は4割程度でした(図・外来腎移植患者さんの1日たんぱく摂取量)。
自分が、1日に塩分やたんぱく質をどれだけ食事から摂取しているか知っていますか?
塩分やたんぱく質の摂取量を知るには、食事内容から計算する方法と24時間蓄尿から推算する方法があります。
24時間蓄尿から推算する場合は、自宅で24時間分の尿を容器に集めて病院に持参します。1日分の尿の全部を病院に持参するのは大変なので、「ユリンメート®P」など尿の1/50を正確に比例採取する容器を使うと簡便です。尿量、尿たんぱく、食塩摂取量、たんぱく質摂取量などがわかります。持参したときの採血結果も併用すれば腎機能の指標であるクレアチニンクリアランスも計算できます。
病院の栄養指導では、食事内容を自分で数日間記録して提出し、管理栄養士さんがエネルギー、たんぱく質、食塩、カリウムなどを計算して食事指導を行います。生ものや免疫抑制薬とは同時に食べてはいけない果物などもチェックして、食事内容について専門的な立場から評価して、どのような食事内容に変えればよいのか助言を受けることができます。
スマートフォンやタブレットで食品成分を計算するアプリもあります。食品成分積算アプリ「快食番人」は、入力した食事内容からエネルギー、たんぱく質、食塩、カリウム、リンなどを自動計算して記録しグラフ化と評価まで行います。慢性腎臓病患者さん向けのアプリであり、日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年」に基づいて食事内容を評価してくれます。例えば食べ終わった食事やこれから食べる食事を入力すると、食事療法基準を満たしているかを知ることができます。毎食ごとに何をどれだけ食べても大丈夫か、自分のスマホでその場でわかるわけです。
Google PlayやApp Storeから無料でダウンロードして使用することができます。
食事療法は薬物療法と並んで慢性腎臓病治療の根幹ですが、患者さん自身の毎食ごとの自己管理にかかっています。あなたは薬を飲むだけで安心してしまって、食事療法がおろそかになっていませんか?