腎移植後のがんの特徴とその予防

■腎移植後のがんの特徴
末期腎不全の治療は、大きく分けて血液透析、腹膜透析、腎移植の3種の腎代替療法があり、いずれかを選択します。一般に、腎移植を受ける機会のある末期腎不全患者さんは、腎移植を選択した方が心血管系合併症などの頻度が減り、長い余命が期待できます。

ところが、がんは腎移植を受けた患者さんの方が多いことが知られており、腎移植の数少ないデメリットです。これは、主として免疫抑制薬の長期使用と腎移植患者さんの高齢化が関係すると考えられています。免疫は人間の体にとって、病原微生物やがん細胞を除去するのに必要な機構ですが、免疫抑制薬により体にとって必要な免疫が長期にわたって抑えられるからです。
腎移植患者さんはがんのスクリーニングを受けていただき、早期に発見し治療することが大変重要です。スクリーニングでがんが早期に見つかった患者さんは、十分に治療でき、がんのない患者さんとほぼ同等の余命が期待できます。

腎移植後の発がんリスクは一般人と比較して2~3倍程度と言われていますが、特にウイルス感染と関連するがんの頻度が増えることが知られています。
がんの中でも特に血液のがんの1つであるリンパ腫などが増えます。腎移植前にEBウイルス 未感染でEBウイルス抗体が陰性の患者さんは、要注意です。また、皮膚がんや腎がんなども頻度が増えます。逆に乳がんや前立腺がんなどは一般人の頻度と変わりません。
※EBウイルス:血液のがんである悪性リンパ腫などのリンパ増殖性疾患を起こすことが知られている。腎移植後は定期的な検査でウイルスの増殖の程度を測定することが可能であり、早期診断することでより早い段階で防ぐことが可能となる。

■腎移植後のがんの予防
予防策として、禁煙、過度の日焼けを避ける、適切な食事、などがあげられます。ウイルス肝炎の治療や胃がんの原因となるピロリ菌の除菌、ワクチン接種なども積極的に行われます。
また、比較的最近発売されたエベロリムスは、投与量が大きく異なりますが、腎がんの治療にも使うことがある免疫抑制薬です。アジアの腎移植施設を中心に、従来の免疫抑制薬の組み合わせにエベロリムスを追加する新しい免疫抑制療法が試みられており、腎移植の数少ないデメリットの1つであるがんの対策となりうるか注目されています。

まとめ