腎臓病治療には、KDIGO(Kidney Disease:Improving Global Outcome(国際腎臓病予後改善機構))というベルギーに本拠をおく非営利団体が作成した世界的な治療ガイドラインがあります。

「腎移植前後の患者さんが抱く基本的な疑問」について、KDIGOが作成した国際腎臓病ガイドラインの視点から東京女子医科大学の田邉一成先生にご解説頂きましたので、シリーズでお届けします。

第1回目の今回は『腎移植手術に際して、免疫抑制剤はいつから使用するのでしょうか?』というご質問に対してご回答、ご解説頂きました。

【質問1】 腎移植手術に際して、免疫抑制剤はいつから使用するのでしょうか?

【回答・解説】
言うまでもないことですが、免疫抑制剤は、腎移植の前ないしは腎移植時から開始すべきです。腎臓が移植される前に免疫抑制剤が効果を発揮していなければいけないからです。ただし、腎移植のどれくらい前から開始するかということについては決まりはありません。多くの施設では腎移植の数日ないしは1週間まえからの開始が多くなっています。

また、腎移植時は抗体製剤の併用使用をすべきであるとされています。抗体製剤とは、腎移植の時の拒絶反応の主役を演ずるTリンパ球を抑制する製剤です。抗体製剤としては世界的にはバシリキシマブ(一般名:バシリキシマブ(遺伝子組換え)、商品名:シムレクト)とサイモグロブリン(一般名:抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン、商品名:サイモグロブリン)がありますが、日本ではバシリキシマブしか使用できませんので、バシリキシマブを使用することになります。

米国では、サイモグロブリンが強力であるために、多くの施設でサイモグロブリンが使用されているのですが、日本では厚生労働省の認可が下りていないため、移植時の併用療法としては使用することはできません。なお、サイモグロブリンは拒絶反応の治療としては使用が認められているのですが、腎移植時の併用投与が認められていないというちょっとわかりにくい状況となっています。

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