東京医科大学八王子医療センター(八王子医療センター)で腎移植手術を受けた患者さんに、CT画像から作成された自分の移植腎の3D画像を、VR(Virtual Reality:バーチャル・リアリティ)を通じて閲覧してもらう世界初となる試みが行われました。
医療用VRシステムの開発を手掛けるHoloEyes社と八王子医療センター、そしてMediPressが共同で行った取り組みをご紹介します。
VRはゲームの世界だけではなく、医療分野でも応用されるようになってきました。今回、HoloEyes社が提供しているVRサービス※を利用して、腎移植患者さんに、通常診療の中で撮影された患者さんのCTデータから生成された自己腎と移植腎に会うという体験をしてもらいました。
VRを通して移植腎に会う体験をされたのは、東京都内に住む林啓子さん。林さんは、約10年前に慢性腎不全と診断されて透析導入となり、2018年春に八王子医療センターで腎移植手術を受けました。
林さんは、以前は小学校教師をされており、非常に好奇心旺盛な明るい女性で、今回、自分の移植腎をVRで見るという取り組みがあることを担当医である今野理先生から聞くと、即座に「体験してみたい!」と答えられたそうです。
実際にVRを通じてご自身の腎臓と移植腎に初めて対面した林さんは、「自分の腎臓が思った以上に小さくなっていて、移植した腎臓が予想以上に立派でびっくりです」と言いながら、VRで対面した移植腎を抱きかかえるようなしぐさをされていたのがとても印象的でした。そして、「この体験を思い出して、健康になった身体や母から提供された腎臓への感謝を忘れないようにしたい」とお話しされていました。
今野先生は、「VR画像には、レントゲン画像やモニターではイメージできないリアル感があり、それが自分の身体へのより深い理解へとつながり、移植後の健康を維持する意識や生活習慣の改善につながる可能性がある」とおっしゃっていました。
林さんは、約10年間の透析生活の中で、小学校の教え子や周りの人達にいろいろな手助けをしてもらったことに恩返しをする意味でも、これからは社会の役に立てる活動をしていきたいと、東京オリンピックのボランティアにも応募し、ウォーキングやスポーツジム通いなど、日々、体力づくりに励んでいらっしゃるそうです。
日本では、2017年には1700件以上の腎移植が行なわれており、医療技術や免疫抑制薬などの進歩によって、移植腎の生着率も向上しています。移植腎をより長く維持するためにも、このような新しい技術を利用して実際に自分の腎臓に会うことで、移植腎への愛情を深め、服薬アドヒアランスの良好な維持や、生活習慣の改善に寄与していくことが期待されます。
※HoloeyesXRサービスは、HoloEyes社が開発した、CTなどの医療用画像から作られた3Dデータを市販のVRデバイスを利用してVR体験を可能にするクラウドサービスです。
現在は、術前のシミュレーションや若手医師の教育用ツール、患者説明用のツールとしてVR画像が利用されています。
(取材日:2019年1月22日)
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