新型コロナウイルスの感染が拡大し、緊急事態宣言が延長される中、腎移植施設の現状や移植患者の受け入れ状況について、東京女子医科大学病院の田邉一成先生にお聞きしました。(オンライン取材日:2020年5月9日)

新型コロナウイルス感染症に対する医療現場の現状(東京女子医科大学病院の事例)

現在、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れていますか。

保健所、東京都からの要請に応じて中等度から重症の新型コロナウイルス感染症患者さんを受け入れています。(2020年5月9日時点)

通常の医療行為(外来、入院、検査、手術など)は何か制限していますか。

現時点では特別な制限はしていません。新型コロナウイルス感染症以外の通常疾患の患者さんもいつも通りに治療できるようにしています。あくまで通常診療も新型コロナウイルス感染症治療と同様に大切だと考えているためです。

医療用マスクやガウン、フェイスシールドなどの医療材料の在庫状況はいかがでしょうか。

厳しい状況が続いていますが、東京都からの医療材料の供給があり確保できています。

新型コロナウイルス感染症対応の実際(東京女子医科大学病院の事例)

都内ではかなり早いタイミングから実施されていた外来におけるトリアージについてお聞かせください。

1月中旬より管理者、各部署の責任者を集めてほぼ毎日、新型コロナウイルス感染症対応会議を行い準備してきました。
2月初めには外来におけるトリアージを開始しています。外来に来られる患者さん全員に対し、検温、病歴・症状確認を、外来棟前のトリアージテントにて行っています。2月からは外来入口にサーモメーターも設置しています。

新型コロナウイルス対策プロジェクトについて教えてください。

新型コロナウイルス対策のために、2月に「Team Corona(チームコロナ)」を立ち上げ準備してきました。独立した病棟を新型コロナウイルス感染症専用病棟として大改装を行い、そこで新型コロナウイルス感染症の中等症の患者を管理しています。重症患者は救命救急ICU全体を陰圧室に改装して新型コロナウイルス感染症専用ICUとして運用しています。

4月には「COVID-19 Task Force(COVID-19 タスクフォース)」を立ち上げ、病棟患者の管理にあたっています。タスクフォースは全部で6チームあり、1つのチームは医師、看護師、臨床工学技師、精神科医師などの多職種にて構成されています。チームは2週間勤務し、1週間休みとしています。6チームありますので、3カ月に1回の勤務となります。

現在、新規の腎移植手術は実施していますか。

生体腎移植(血液型不適合移植も含む)、献腎移植とも通常通り行っています。

腎移植者への対応について

腎移植者で新型コロナウイルス感染の疑わしい症状があった場合、診察してもらえるのでしょうか。PCR検査は受けられるのでしょうか。

日中は泌尿器科の外来に、夜間は救急外来にご連絡の上来院していただければ、すぐに診察できます。PCR検査も院内において24時間体制で対応しているので、新型コロナウイルス感染の疑いがある場合、すぐに対応可能です。

新型コロナウイルス感染症と判明した場合、入院・治療は受けられるのでしょうか。

4月中旬より、当院は新型コロナウイルス感染症対応病院となりましたので入院は可能です。

感染患者にはどのような治療が行われているのでしょうか。

チームコロナ、COVID-19 タスクフォースで症例ごとに毎日治療方針について検討しています。治療法は国内外の論文や海外の医師との直接の情報交換から得られた情報などをもとに報告された有効な治療法を行っています。

新型コロナウイルス感染症 終息までの見通しについて

ワクチンが開発されるまでにはどのくらいの期間が必要だと思われますか。

現時点ではわかりませんが、年内には何らかのワクチンはできると思います。しかし、多数の人がワクチン接種を受けられるような大量生産まではさらに時間がかかるのではないかと思います。

現時点で有効な治療薬はあるのでしょうか。

いくつかの治療薬が有効かもしれないと報告されています。5月7日に承認されたレムデシビルや、近々承認予定のファビピラビル(アビガン®)、シクレソニド(オルベスコ®)、イベルメクチン(ストロメクトール®)は有効ではないかといわれています。

今後、どのような状態になれば終息といえるのでしょうか。

完全な終息は、新型コロナウイルス感染症患者の新規発生が0になったときでしょう。新規発生がある限り院内感染の可能性があり、現在の厳重態勢は変えられません。そこに至るまでには、まだこれから大変な忍耐と労力とお金がかかるのではないでしょうか。

移植者の方々へ

一番確実な予防策は「感染者に接近しないこと」ですので、これまで通りソーシャルディスタンスを保ってください。そして、手洗い、マスクなどの感染予防の徹底を継続してください。 何か気になる症状があれば、まずは主治医に連絡して対応を確認していただきたいと思います。

physical distancing