生かされた自分にできること
移植をしてから一番良かったことはどのようなことですか。
平山さん:
移植後、サイトメガロウイルス感染を乗り越えてやっと元気になり、将来のことを考えられるようになりました。くも膜下出血は3分の1の確率で亡くなる方がいる中で命を救われ、その後、移植を受けることができ、苦しい時期も乗り越えることができました。生かされている自分に何かできないか。何かをしたい。と思うようになりました。
透析を受けていた頃は、家族で食事に出かけても、自分だけ気持ちが悪くなって外に出ていることもありましたし、バスや電車に乗る時も、具合が悪くなったらどこで降りようか、どこのトイレに行こうかと常に考えていました。そのような状態だった私が、何も心配せずに出かけられるようになり、自分に自信が持てるようになって、前向きに生きることができるようになりました。
移植後に始めたことはありますか。
平山さん:
元気になった私に、義父が、経営している会社の経理を任せたいと言ってくれ、週1~2回、会社まで通うようになりました。それが私にとっては良いリハビリになり、現在は、主人の会社で経理を担当しています。
また、与えられた命を社会に役立て、好きなことで社会に貢献していきたいと考え、アニマルコミュニケーターの仕事も始めました。手術後、動物番組を見たり、保護猫を飼い始めたりする中で、アニマルコミュニケーターという仕事があることを知り、私がやりたかったことはこの仕事だと思い勉強し、今は仕事としてやっています。
アニマルコミュニケーター:動物と意識の中で意思疎通をし、言葉を話さない動物と人間の間に立ち、動物の気持ちや想い、感情を言葉に置き換える仕事
保護猫のおもちちゃん
今後、やってみたいことはありますか。
平山さん:
ハワイに行きたいですね。私はハワイに半年ぐらい留学していたことがあり、主人はハワイの大学に通っていたので、思い出の地なのです。ただ、猫を飼い始めたので、しばらくは行けないと思いますが、またいつか行きたいと思っています。
日常生活で気を付けていることはありますか。
平山さん:
一般的なことですが、水をたくさん飲む、バランスの良い食事を取るということです。
血圧は朝と夜に測るようになりました。今は降圧薬も飲んでいないですし、すごく良い状態です。
支えてくれた人々への感謝
日髙先生への思いを教えてください。
平山さん:
私は他の患者さんよりも大変なことが多かったのではないかと思いますが、いつも温かく見守ってくださり、とても感謝しています。
お父様やご家族への思いを教えてください。
平山さん:
定年退職し、ゆっくり過ごしていた父に、心配や痛い思いをさせてしまい、申し訳なかったと思います。ドナーになるという決断をしてくれたことを心から感謝しています。これからも元気に長生きしてほしいと思っています。
私はこれまでの治療選択において、その時その時で最善の方法を取ることができたと思いますが、透析はただ生きるために受けていました。移植後の今は、毎日楽しく自分の人生を生きることができています。こうなれたのも、家族や先生方、私に関わってくださった方のおかげだと、日々、感謝しています。
移植を検討している方にメッセージをお願いします。
平山さん:
透析中のつらさは、なかなか口に出すのが難しく、自分で抱え込んでしまう方も多いのではないかと思います。でも、そのような時は、遠慮をせず、家族や医療者の方々、親しい人に、「つらい」と言うことが大事だと思います。周りの支えてくれる人としっかりとコミュニケーションを取ることが大切です。
私は透析中に体調が悪くなることが多く、家族にたくさん心配をかけたので、元気に暮らせるようになった今を、家族皆が喜んでくれています。
移植手術をするという決断に至るまでには、さまざまな思いを抱えることがあると思います。でも、よく考えて、よく話し合って、治療法を選択していってほしいと思います。