移植医療との出会い・妻からの温かい申し出

血液透析を始められてから約1年半後に生体腎移植手術を受けられたとのことですが、移植に関しての知識は以前からお持ちだったのでしょうか?

駒形さん
腹膜透析をしていた頃は移植の知識は殆どありませんでしたが、北里大学病院の腎臓内科の先生や吉田先生から、 腎臓病の治療には様々な方法が有り、その1つに透析治療があるということ、最終的には腎臓移植という方法もあるということは教えて頂いていました。 ただ、移植医療は私には全く現実性のない話だと思っていました。

その後、何故移植手術を受けようと思ったのでしょうか?

駒形さん
血液透析を開始して間もない頃、私がたまたま吉田先生からお借りした腎移植のDVDを妻が一緒に見て、腎移植後は透析患者さんの生活が改善されることを知り、自発的に自分の腎臓を使って欲しいと言ってきました。

奥様がドナーとなることを申し出てきた時にはどのようにお感じになりましたか?

駒形さん
「妻の体を犠牲にしてまで治療したくない」と、初めは断りました。しかしながら、妻との話し合いの後、まずは吉田先生に相談することにしました。
吉田先生からは「奥様が腎臓を提供しても大丈夫であるかどうかと腎臓が適合するかどうかを検査し、どちらも問題なければ移植出来ます」とのご返答を頂きました。 妻は私が腹膜透析で辛い思いをしている様子や、血液透析で夜中に足がつったりして苦労しているのを傍で見ていたので、少しでも病状の改善が出来ればと思ったそうです。当時の私のクレアチニン値は13.35㎎/dlでした。
その頃、私は透析生活で生涯を終っても良いと思っていましたが、妻の申し出に正直どうしたものかと悩みました。
結局、妻から何度も「幾らも無い人生を夫婦がそろって元気で過ごす事が、一番幸せに成るのだから」と説得され、有り難く受け入れる決心をしました。

移植手術に臨んで

移植手術を受けることを決めてから、実際の手術までの期間はどのくらいでしたか?

駒形さん
2006年5月に吉田先生にご相談をして、6月にクロスマッチテストを行い、移植が可能だとのご連絡を頂きました。それから手術の予約を取り、10月初めに手術を受けることになりました。
術前の8月に2人で検査入院をして、あらゆる検査をして頂きました。すべて問題が無かったため、実際手術の日まで、2人できちんと食事をしたり、風邪や虫歯、水虫等手術に弊害のあるものを除く治療を受けたり、日々の体調管理に気を付けていました。
移植手術を受けようと決めてから5ヶ月間、色々な事をしなくてはならなかったので、物凄く早く感じましたね。
本番の手術前は、私が12日前に、家内が3日前に入院して手術に備えました。妻と私の血液型が異なるので、術前に私の血漿交換を行い、特殊な免疫抑制剤で抗体を取り除き、術後に拒絶反応が起こらないような処置をして頂きました。

入院の際はどの様なお気持ちでしたか?

駒形さん
私はとてもドキドキしていましたが、妻は腹が座っていて落ち着いていましたね(笑)

移植手術を終えた時はどの様なお気持ちでしたか?

駒形さん
手術後、先生から無事終わった事を、麻酔がまだ少し効いた状態で聞きました。同時に妻も無事に終わっていた事を知り安心しました。
病室に帰って暫らくして、先ず膀胱に差し込まれたカテーテルから尿が出た事を知った時、感情を抑える事が出来ませんでした。1人病室で涙しました。
  妻の厚意への感謝と吉田先生はじめ医療スタッフに対しての感謝の念は一生忘れる事はありません。もちろん今も当時の気持ちのままです。本当に腎移植を受けることが出来て良かったと思いました。

先生、駒形さんは生体腎移植でしたので、手術後すぐに尿が出ていますが、献腎移植の場合は術後どのくらいで尿が出るのでしょうか?

吉田先生
脳死移植の場合は、術後すぐに尿が出ることもありますし、多くが術後1~2日以内には出ます。
心停止の移植の場合、これまでの当院における平均透析離脱時間は10~14日ですね。