突然巡ってきたチャンス
献腎移植の連絡を受けた時はどの様なお気持ちでしたか?
相場さん:
65歳近くになり、もう私のところには移植の連絡は来ないだろうと思っていた矢先に、突然「第1候補です」という連絡があり、一瞬「えっ!」と驚くと共に、迷いを感じました。でもこの機会を捉え、これからの人生に生かしていきたいという思いで手術を受けることを決断しました。
第1候補という連絡を頂くまでに、移植の連絡を頂いたことはありますか?
相場さん:
それまでには、3~4番目の候補だという連絡は2回程ありました。移植の連絡は結構来るのだな、という感覚ではおりましたが、まさか第1候補の連絡が来るとは思っていませんでした。
第1候補の連絡を頂いた時、迷いを感じたのは何故ですか?
相場さん:
自分の年齢では移植はもう無理なのではないかと思っていたためです。
移植の連絡を頂く少し前も、ちょうど臓器移植ネットワークの更新時期だったのですが、もう連絡は来ないだろうと思っていた為、血液サンプルの送付も止めようと思っていました。ところが、その話を看護師さんにしたところ、「何を言っているの!あなたは血液を採ってもらって送るだけでしょ!」と言われ、血液サンプルを送ったのです。
驚くことに、血液サンプルを送った1週間後くらいに移植の連絡を頂いたのです。その看護師さんへの感謝の気持ちは一生忘れないですね。
その後、実際の手術に向けてどの様なお気持ちでしたか?
相場さん:
その時は自分に手術に耐える体力があるかどうかということより、私の年齢でも移植を受けることが出来るのだな、という思いが強かったです。「もしかしたら手術をすることで更に悪い状況になってしまうかもしれないけど、最後の賭けをするからな」と妻に話しました。移植して上手く行けば、もっと良い生活ができるから、とも思い「もうやるしかない!」と気持ちを切り替えていきました。
八木澤先生:
相場さんは、前年に腎癌の手術をされていましたので、こちらから移植の連絡をさせて頂いた時には、「今も移植に対する前向きな気持ちをお持ちだろうか」と心配しておりました。しかし相場さんから手術を受けるというお返事を頂いたことで、相場さんは私達が思っているよりも、お気持ちが、精神面がお元気なのだなと思いました。そして、腎癌治療を受けた相場さんの体に異常が無ければ、必ず移植をしなければ、と思いました。
その時私は出張中でしたので、出張先から相場さんが腎癌の手術を受けた病院に電話をし、移植手術を行っても問題ない状態かを確認させてもらったのを覚えていますね。
移植を受けるには、前向きな気持ちを持っていることも大切なのですね。
八木澤先生:
そうですね。60代の方でも、身体も精神面も元気であれば、移植手術を受けることが十分可能だと思います。透析期間が長くなると血管の問題などで手術自体が大変なこともあるのですが、それさえ乗り切れば十分可能ですね。
良縁に恵まれて
移植手術を終えた時のお気持ちを教えて頂けますか?
相場さん:
大変な手術なのだろうと思っていたのですが、あっと言う間に終わった感じがしました。苦しさや痛みなどは全然感じませんでした。
目が覚めると家族の顔があり、ホッとしたのを覚えています。また、執刀して頂いた先生が八木澤先生の下で勤務されている先生だという事を知り、非常に安心したのを覚えています。
手術後の経過はどうでしたか?
相場さん:
手術後6日目に尿が出始めて、その後尿量が増え、15分間隔になった時には寝る間もないほど大変な時期もありましたが、術後の痛みなどは全くなく、順調に経過し退院する事が出来ました。退院後はきわめて順調です。
先生、献腎移植の場合は手術後どの位で尿が出るのでしょうか?
八木澤先生:
腎臓の状態にもよります。早ければ術後すぐに出る方もいますが、大体1週間前後ですね。相場さんも手術後2回、透析をされたと思います。
相場さん:
八木澤先生は透析中も退院の日も病室に来てくださり、励ましてくださいました。退院時はまだ透析中の合併症が残っており、歩くことが出来なかったので車椅子で退院をしたのですが、退院後の生活の中でも先生に掛けて頂いた言葉が本当に力になりました。
現在は合併症も改善されていらっしゃいますか?
相場さん:
移植前は腎癌の手術後から腕や肩の痛みが起き、その後腰、両足の痛みや痺れが日常的になって、歩行困難になり3分間立っていることも出来ない状況でした。字を書くことも箸を持つことも出来ず、パソコン操作なども出来なくなってしまっていたのですが、移植後は時が経つほどに、目に見えて改善され、未来に明るい希望が持てるようになりました。
八木澤先生:
移植をされたことによって、透析による神経障害も無くなってきているのだと思います。