大切な腎臓のために

移植後の日常生活では、移植腎のために特にどのような事に気を付けて生活をしていますか。

牧野さん
禁煙と、塩分を控えること、あとは体重の減量について考えています。今、67キロあるので60キロにはもっていきたいですね。

減量に関しては患者さんに対して何か指導をしていらっしゃるのですか。

大月先生
私たちは、「NST」というのを頑張ってやっています。NSTはニュートリション・サポート・チームで、これは日本でも海外でも活動がだいぶ盛んになってきています。NSTの当初の目的は、低栄養患者の状態を良くすることによって、さまざまな手術や各種疾患の合併症、感染症等を減らそうというものですが、私たちはさらに発展させて、比較的栄養状態は保たれている移植患者さんが肥満に伴って移植腎が悪くなるのを防ぐために、管理栄養士に入ってもらっています。移植患者さん全員を、NST回診の対象にすることに決めており、移植医療の一環として取り入れており成果を上げています。

牧野さんもNSTの指導を受けていますか。

牧野さん
栄養指導は1回受けました。体重があまりに増えたので、行ってくださいと言われました。
1週間食べたメニューをすべて書き出してチェックされました。私の場合はコンビニのお弁当が多かったので、「カロリーを確認して、なるべくカロリーが少なめのお弁当を選んでください」と指導を受けました。

毎日の薬の管理はどのようにされているのですか。

牧野さん
現在、内科や耳鼻科の薬も含めると、全部で10種類以上飲んでいます。そうすると、薬の袋も10数個にもなるので、朝・昼・晩と、服用のたびにそれ ぞれの袋から薬を1個1個取り出していてはやっていられないので、薬を薬局からもらったら必ず14日分のセットをまずは作っておくようにしています。 茶封筒でも何でもいいので、1日分を14個作っておいて、それを常時持ち歩くようにしています。また、何か非常事態が起きたときのために、常に予備も2袋持ち歩いています。

大月先生、病院から、予備を持ち歩くよう指導をされているのですか。

大月先生
特別な指導はしておりませんが、多くの患者さんはそうされているようです。恐らく東日本大震災の時に、「薬がなくなるということ」の意味を、多くの患者さんが理解されたのだと思います。もともとギリギリの日数分ではなく、若干ゆとりがあるように処方してはいますが、薬を複数カ所に分散して置くことや、家族の方が分かるようなところにストックしておくというようなことを、震災後は患者さんがより意識されるようになったのではないでしょうか。

この機会を精一杯活かして

移植後、新たに始めたことや、今後の夢はありますか。

牧野さん
移植して2年後に転職しました。もともと、タクシーの配車の無線業務をやっていたのですが、少し勤務時間が不規則でした。アルバイトの担当者が朝5 時に自宅に帰るので、自分も1日おきに朝5 時に出勤する必要がありました。そうすると、どうしても寝不足になりがちなので、自分の体を休ませるために、より自由が利くタクシー運転手の方に仕事を替えました。疲れたら寝てればいいですし(笑)。
また、スポーツでは、ゴルフを始めました。まだ1回しか達成したことはないのですが、100を切るのが目標です。
また、今後の目標は、今の仕事をしっかりとやり遂げることです。タクシー会社で労働組合の活動を引き継いだので、皆が働きやすい会社になるように、精一杯考えたいですね。

牧野さんは千葉東病院の患者会(千葉東クローバーの会)の会長をしていらっしゃるとのことですが、患者会の活動について教えていただけますか。

牧野さん
平成19年の7月に発足して、今は会員が116名です(平成26 年2月現在)。当初、病院から「やってみようよ」という話があり、現在会長が私で、副会長が4人という体制で運営しています。

昨年、減塩食の試食会などをやられたそうですが、このようなイベントを毎年やられているのですか。

牧野さん
イベントは年によって異なりますが、親睦会や勉強会は毎年やっています。去年の親睦会は11月にバーベキューをやりました。また、患者会の情報誌として、年に2回ぐらい通信も発行しています。


患者会の活動

メッセージ

大月先生へお伝えしたいことはありますか。

牧野さん
執刀は別の先生だったのですが、大月先生には入院中から尿管障害などで、いろいろと処置していただいています。いつもよくしてくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。

提供ドナーの方への思いを教えてください。

牧野さん
心から感謝しています。精一杯生きることが恩返しだと思っています。

最後に、現在、献腎移植を待っている方や献腎移植希望の登録を検討している方へメッセージをお願いします。

牧野さん
臓器移植法が改正されて、脳死の移植件数が増加傾向に進んでいます。希望を持って、体調管理を継続してください。あとは、献腎移植希望の登録をしているということを、きちんと職場に伝えておくことが大切だと思います。私は、自分が移植希望登録をしていることを会社に言っていなかったため、引継ぎはしましたが、おそらく迷惑をかけたと思います。ですから、いつどういう状況になるかというのは、ある程度上司に報告しておくべきだと思います。

大月先生からも献腎移植を待っている方に、メッセージをお願いします。

大月先生
日本では、「移植」ということに対しての社会的許容がまだ十分でなく認知度も低いですが、勇気を持って待機していただきたいと思います。そして、毎年、登録病院には来てください。病院で患者さんの状況を実際に診察するのは、やはり医療の基本中の基本です。同じ10年の待機期間であっても、毎年の来院時にコミュニケーションを取り、現在の透析状況や健康状態を確認し、年々絆が深まってから移植を迎えるのと、それが全くないまま移植をするのとでは、その後の治療の成績においても、気持ちの部分においても、違いは非常に大きいと思います。
勇気を出して登録し、その勇気を持続して体調や服薬の管理を徹底し、良い状態でお待ちいただければいいのではないかと思っています。

集合写真