奈良県立医科大学附属病院レシピエントインタビュー第2回目は、約6年半前に、お父様がドナーとなり、生体腎移植手術を受けられた竹林友美さんです。竹林さんは中学生のころにIgA腎症と診断され、出産後、徐々に腎機能が悪化し、30歳の時に血液透析導入となりました。移植を受けるまでのお話や、移植後、ご家族との旅行や仕事などで充実した毎日を過ごされている様子をお聞きすることができました。

竹林さんが移植を受けるまでの経緯

  • 1991年(14歳)頃 IgA腎症と診断される
  • 2003年9月(26歳) 第1子出産
  • 2004年(27歳) 保存療法開始
  • 2007年2月(30歳) 血液透析導入
  • 2008年1月(31歳) 生体腎移植手術

予告された透析導入

病状が出始めてから、移植手術に至るまではどのような生活でしたか。

竹林さん
小学校の尿検査で潜血を指摘されたため、近くの病院で投薬治療を開始し、中学生の時に腎生検を受け、IgA腎症と診断されました。その後も月に1度の通院をしていましたが、特に体調の変化を感じることはなく、中学・高校・短大時代を過ごし、就職して結婚しました。2003年に出産した後は、徐々に腎機能が悪化してクレアチニン値が上昇し、2007年2月に血液透析導入となり、その翌年、2008年1月に生体腎移植手術を受けました。

20歳ごろまでは自覚症状などはなかったのですか。

竹林さん
自覚症状は、特にありませんでした。ただ、徐々に尿蛋白が出るようになってきていましたので、毎月通院し、薬を飲んでいました。

薬を飲む以外は、普通の学生生活を送っていたのでしょうか。

竹林さん
はい。体育は休んだりしましたが、普通に過ごしていました。部活はソフトボール部に入っていましたが、激しい運動はできないので、部員のサポートをしていました。

先生、竹林さんのように、出産後に腎機能が悪化する方も結構いらっしゃるのでしょうか。

米田先生
いらっしゃいますね。竹林さんは妊娠、出産前から尿蛋白が出ていたということですので、当時診察していた医師からも、出産後の腎機能についてお話があったのではないかと思います。


第一子出産

竹林さん
当時診察していただいていた先生からは、「子どもに影響があるかもしれないから」と言われ、妊娠期間中の服薬は止めていました。その後、子どもを産んですぐに、「5年以内くらいに、透析導入になるかもしれません」という、予告のようなものを受けたのですが、本当に4年後に透析導入となったので、「ぴったり当たったなあ・・・」とびっくりしましたね。


父の愛情

移植に関しての情報や知識は、いつ、どのようにして知ったのでしょうか。

竹林さん
小学生のころから腎臓が悪く通院していましたので、「透析や移植という治療法がある」ということは知っていました。

移植手術を受けようと思ったきっかけを教えてください。

竹林さん
当時、私は30歳でまだ若かったということもあり、先生から、「今後の生活を考えていく上で、提供してくれる人がいるのであれば、やはり移植をした方がいいと思います」と勧められ、移植手術を受けたいと思いました。

ドナーの方はどのようにして決まったのでしょうか。

竹林さん
父はもともと移植医療を知っており、「必要な状況になったら、自分がドナーとなって提供しないといけないな」と思ってくれていたようなのですが、「レシピエントとドナーの血液型が同じ方がいい」と言われ、私と同じ血液型の弟も、ドナーとして申し出てくれました。
ただ、先生から、「竹林さんはまだ若いので、移植を2回する可能性もあるかもしれません。やはり順番としては、今回はお父さんから頂いて、もし弟さんが提供してくれるのであれば、後に残しておいた方がいいのではないでしょうか。」というお話をされたため、父がドナーになることが決まりました。

米田先生から初めて移植の説明をお聞きした時には、どのようなお話がありましたか。

竹林さん
米田先生には、移植前から移植後のことまで、詳しくいろいろと教えていただきました。どのように治療を進めていくのかという順序的なものを、分かりやすく教えていただいたので、しっかりとイメージすることができ、納得することができました。そのお話で、父も私も、とても安心したのを覚えています。

先生、レシピエントとドナーの方に対しては、最初にどのようなお話をされるのでしょうか。

米田先生
段階がありますが、一番初めは、術前検査の内容や、検査結果がどうであれば手術ができるのかという話をします。その後、手術が決まった方には、実際の手術がどのようなものかということや、レシピエントとドナーの入院期間、術後の回復に必要な期間、退院後はどのくらいで働けるのか、生活はどのようになるのかなどの具体的な話をします。

お話をされる際に、特に意識していらっしゃることはありますか。

米田先生
まずは、きちんと理解していただくということですね。それとやはり、手術を受けることに対して不安をお持ちの方がいらっしゃいますので、「最近移植手術を受けられた患者さんは、このように手術をし、現在はこのような生活をしています」というような、現実味のある話をするようにしています。

具体的な事例をお話しして、安心していただくのですね。

米田先生

米田先生
そうですね。そしてもう一つ、移植後の合併症を防ぐために気を付けなければならない点について、詳しくお話ししますね。やはり、移植後は食事がおいしく感じられるようになるので、どうしても食事管理がゆるくなってしまう方がいらっしゃいます。移植をして透析から離脱できても、食事管理はきちんと行わなければいけません。食事管理や適度な運動を行い、「腎臓を大切にしないといけない」ということは、何回もお話ししますね。