太陽の光を取り戻して
戸田中央総合病院の移植に携わった先生に、お伝えしたいことはありますか。
緑川さん:
「ありがとうございます」の一言です。こんなに元気になりました。希望のない人生に、太陽の光を与えていただきました。手術をしてくださった先生は、現在はこちらの病院にはいらっしゃいませんが、いつも私の心の中に、大きな存在として鎮座しています。
「太陽の光」をもらったとはどのようなことでしょうか。
緑川さん:
移植前は、毎日が真っ暗でした。透析中はいつも死について考えていて、死に関する本をたくさん読みましたが、「これだ」というようなものは見つからず、「やはり生きることが大事なんだな」という結論に至っていました。ですから、つらい毎日でしたが自ら死のうとは思っていませんでした。ただ、透析が終わった後に仲間と、「気を付けて帰ろうね。透析の前に交通事故に遭うのはいいけれど、終わったあとは嫌だよね。次の透析まで2日間あるわけだから、その2日間をちゃんと生きてから、交通事故に遭いましょう。」などと言っていましたね(笑)。
移植をしてからは太陽の光に照らされたような気持ちになり、死を遠くへ追いやったのか、死が遠くに行ってくれたのか、あまり死について思うことがなくなりました。
妹さんへの思いを教えてください。
緑川さん:
本当によく決心をしてくれたと思います。感謝の気持ちで一杯です。妹に何かあったときは、最大の協力を惜しみません。
メッセージ
現在、移植手術を控えている、または移植手術を検討しているレシピエントやドナーの方へメッセージをお願いします。
緑川さん:
透析をしながらも、「移植をすれば元気になれるんだ」ということを、常に心の中に持っていてください。夢は必ず実現します。
先生からも、現在移植を検討している方々にメッセージをいただけますか。
松田先生:
緑川さんのお話にもありましたように、透析導入になった時点で、人生に対して絶望してしまう方も多いのではないかと思います。でも、もし移植ができる機会があるのであれば、移植を一つの目標として、生きる力を得ていただければと思います。移植ができれば、緑川さんのように、自分のことで精一杯だった状態から社会に貢献する立場になり、ご自身のエネルギーをどんどん社会に還元していくという良いサイクルができると思います。
治療選択肢があるということを知らないために、絶望の中で透析を続けている患者さんもいらっしゃるかと思いますので、「透析から移植という道がある」ということを、もっと多くの方に知っていただきたいと思います。
がんになってしまったとしても、緑川さんのように、移植するチャンスもあるわけですからね。
松田先生:
そうですね。「がんになってしまったから駄目だ」と思わずに、まずは検査を受けてみるのが良いと思います。その結果、「何年は待ちましょう」とか、「このがんであれば、ステージが早いので、すぐに治療して移植をしましょう」となるかもしれません。やはりケースバイケースだと思いますので、まずは移植の門を叩いていただければと思います。