大切な腎臓のために
移植後の日常生活ではどんなことに気を付けて生活していますか?
熊野さん:
セルフカテーテルによる自己導尿をしているため、尿路感染にならないようにすることや、服薬管理をきちんとすること、暴飲暴食を避けることなどです。
日常の服薬や血圧、体重の管理などはどの様に行っていますか?
熊野さん:
服薬に関しては、服薬管理手帳を利用しています。血圧は職場なども含めて随時測定し、体重はほぼ毎日計測しています。
先生は移植後の管理に関してはどの様な指導をしていらっしゃるのですか?
北田先生:
担当の先生によっても多少異なると思いますが、私は体重を毎日量るように言っています。体重測定そのものも重要ですが、健康管理への意識を常に持っていただくという意味もあると思っています。免疫抑制剤の飲み忘れがないように、ということはもちろんですけどね。
また、移植した腎臓は大切ですが、腎臓の為に生きているわけではないので、「普通の生活をするということも、とても大切ですよ」とお話ししています。患者さんの性格(几帳面な方なのか、アバウトな方なのか等)によってもアドバイスは変わってきますね。
移植後新たに始めた事や今後の夢はありますか?
熊野さん:
移植後、定年退職していた職場に非常勤として復帰しました。また、ボランティアで盲人野球の審判や全国大会の際のサポートを行っています。その他、好きだった旅行を再開したり、あかつき会(九州大学病院 移植者 患者会)の活動に参加したりするようになりました。
奥様(ドナー):
現在私も仕事もさせてもらっており、娘が里帰りをした時には孫の子守をしたりと毎日忙しくしています。今後余裕ができた時には、これまでの経験を生かして、ボランティア活動なども考えていきたいと思っています。
メッセージ
最後に現在移植を控えている、又は検討している方へメッセージを頂けますか?
熊野さん:
私は移植手術を受けた事で、今までの人生、生活が大きく変わりました。諦めずに挑戦をして欲しいと思います。
奥様(ドナー):
現在は移植の情報を得られる場がとても限られていることがとても残念です。移植に巡り合えるきっかけがつかめるかどうかで、その後の生活の質が変わってくるという事実を伝えたいです。今の進んだ医療を信じて、レシピエント・ドナーそれぞれが、家族の幸せの為に勇気を持って移植に望んで欲しいと思います。
夫婦間移植を考えている方へ先生からメッセージを頂けますか?
北田先生:
現在は血液型が違っても移植が出来るようになったということもあり、夫婦間腎移植は当院の全移植数の約30%を占めるまでになりました。
ご夫婦がお互いを思いやる気持ちがあって、それからの人生を一緒に考えていこうとされる時に「移植」が一つの選択肢となるのだという事を知って頂きたいですね。
そしてまずは現在の移植医療の実態(血液型が異なっても出来る事や、入院期間や費用など)を知って頂き、その上でご夫婦はもちろんご家族で判断され、信頼できる移植施設で移植を受けて欲しいと思います。