大阪医科大学附属病院 レシピエントインタビュー 第1回目は、約2年半前に奥様がドナーとなり生体腎移植を受けた大橋孝史さんです。
大橋さんは67歳の時、腎機能が悪化して血液透析導入となりましたが、腎移植という治療法があることを知った奥様からの申し出によって、翌年、生体腎移植を受けることができました。移植後、いつも夫婦一緒に過ごしている仲の良い大橋さんご夫妻から、さまざまなお話をお聞きしました。

大橋さんが移植を受けるまでの経緯

  • 2013年9月(67歳) 硬膜下血腫の手術
  • 2013年10月(67歳) 硬膜下血腫再手術
  • 2013年11月(67歳) 血液透析導入
  • 2014年3月(67歳) 生体腎移植手術

血液透析導入へ

まず、ご主人が透析導入となった経緯を簡単に教えていただけますでしょうか。

奥様(ドナー)
主人は、もともと血圧が高く、2002年に大動脈瘤の手術を受けました。2013年9月には硬膜下血腫で手術を受け、10月にも再手術を受けました。そして同じ年の11月に透析導入となりました。血圧が高かったことも、腎機能が悪化した要因の1つだと思います。

透析導入となった2013年までは、腎機能に関して医師から指摘されたことはありましたか。

奥様
硬膜下血腫の手術を受けた病院で腎臓も診てもらっていましたが、先生からは、「透析導入が近いです」とは言われていました。

大橋さん
手術を2回受けた後、どんどんクレアチニンの数値があがっていきました。手術による負担がかかったのかもしれません。

ご主人は、透析導入前、透析にはどのようなイメージをお持ちでしたか。

大橋さん

大橋さん
透析の知識は全くありませんでしたが、仕事ができなくなるかもしれないので、透析導入はしたくないと思っていました。

透析導入後はどのような生活をされていましたか。

大橋さん
導入後も仕事はしていましたが、週に3回、病院に行く時間が拘束されますし、病院に行く度に検査をするので、家での食事内容を注意されたりして嫌でしたね。でも、次の透析までに体重が増えすぎてしまうと、透析中に足がつったりするので、水分は取りすぎないように気を付けていました。

平野先生
大橋さんは、2013年の10月に腎機能が悪化してきたということで当院を受診されたのですが、その時点ですでに血清クレアチニン値が8mg/dLになっていましたので、すぐに腎代替療法を検討しなければならない状態でした。そのため、腎移植についても説明させていただきましたが、まずは透析導入して、少し落ち着いてから腎移植を検討しましょうというお話をしました。11月に透析導入となり、しっかりと準備をして翌年の3月に腎移植手術を行いました。

移植手術前の様子

腎移植という選択肢

腎移植についてはどこで最初に知ったのですか。

奥様
主人も私も腎移植については全く知らなかったのですが、こちらの病院で診察を待っている時に、小さい冊子が待合室に置いてあったので、それを読んで腎移植という選択肢があることを知り、先生にお聞きしました。「私たち夫婦は年齢が高いけれど、腎移植が可能なのか」とお聞きすると、「検査で問題無ければ大丈夫ですよ」と言ってくださいました。
※日本腎臓学会・日本透析医学会・日本移植学会・日本臨床腎移植学会「腎不全 治療選択そその実際」

奥様がたまたまその冊子を読んで、先生に聞いたのが始まりだったということですね。

奥様
そうですね。その時に私が、「あげようか?」と言ったのが始まりだったと思います。私がその場ですぐにあげるという話をしたので、先生にはかなり驚かれましたね(笑)。
子どもにも相談せずに腎提供を決めてしまいましたので、後で子どもたちにも驚かれました。

平野先生
大橋さんが受診された際に、高齢でも移植が可能かということや、ご夫婦で血液型が違ったので、血液型が違っても移植が可能かということを聞かれたことを覚えています。

ドナーとレシピエントの血液型が違うと移植ができないと思っている方は今でも多いのでしょうか。

平野先生

平野先生
多いですね。今はドナーとレシピエントの血液型がどのような組み合わせでも移植ができますが、腎移植についての断片的な知識で難しいと自己判断してしまっている方が多いです。

大橋さんは一旦透析導入されましたが、どのくらいの血清クレアチニン値で移植施設を受診すれば、透析を経ない、プリエンプティブ(先行的)腎移植が可能なのでしょうか。

平野先生
その方の状況にもよりますが、早ければ早いほどいいです。可能であれば、血清クレアチニン値が4mg/dLくらいまでに一度受診していただきたいと思います。