腎提供のご褒美
移植手術が決まってから、実際の手術までの期間はどのくらいでしたか。
康平さん:
手術が決まってから移植手術までは1カ月も無かったと思います。手術までは普段通りの生活をしていました。
移植手術を終えた時のことを覚えていらっしゃいますか。
康平さん:
手術を終えた直後は苦しくて、移植して良かったのかどうかを判断できる状態ではありませんでした。ただ、だんだん良くなるのだ、という希望を持って過ごしていました。
正美さん:
私は移植手術後、集中治療室で麻酔からさめた時は、正直、移植手術をしなければよかったと後悔しました。なぜかと言うと、私でもこんなに苦しいのに、主人は絶対耐えられないだろうと思ったからです。
しかし、様子を見に来た息子と娘から、耳元で、「お父さんの方が元気だね」と言われたのです。息子たちは、「お父さん元気だよ、おしっこ出たよ」と教えてくれましたが、それでも半信半疑でしたね。でも先生が、「きれいな腎臓でしたよ。大丈夫でしたよ。」と言ってくださり、少し安心することができました。
手術後の経過はどうでしたか。
康平さん:
手術後の経過は順調でしたが、退院後も4カ月くらいは寝たり起きたりの生活でしたので、すぐ元気になって歩けたという感じではありませんでした。現在もリハビリをしながら、少しずつ体力の回復を図っています。
正美さん:
私は手術直後を除き、とても元気で、痛みも無く順調に回復しました。元気になって自分で歩けるようになってから主人に会いに行きましたが、しばらくは主人のことが心配でした。
私が手術後1週間で退院する際も、主人はあまり尿が出ておらず、かなりむくんでいたので、そんな主人を病院に置いていくのがとても不安でした。退院後は1週間必死に歩いて体力をつけ、退院2週間後から毎日主人の病室に通いました。
主人は退院の時にもまだむくんでいましたが、渡邉さんが、「退院すると、皆さんむくみが取れ、元に戻りますよ」とか、先生が、「膀胱が膨らまない人はいないですよ」言ってくださったので、その言葉に本当に支えられました。
渡邉さん、術後の回復に時間がかかるのは、透析歴の影響もあるのでしょうか。
渡邉レシピエント移植コーディネーター:
そうですね。透析歴が長いと膀胱が小さくなっていますので、手術後、通常の排尿間隔に戻るまでに時間がかかります。
年齢が若い方や、透析歴が短い方であれば、手術後2週間で退院し、その後2週間で、重労働でなければ仕事を再開される方もいらっしゃいます。
退院後、ご主人は4カ月くらい、寝たり起きたりの生活だったということですが、奥様も看病が大変でしたか。
正美さん:
退院後しばらくは、ベッドにご飯を運んで食べさせたり、ベッドで尿を取ったりしていました。このまま寝たきりになってしまうのかとも思いましたが、それでも透析に通う必要がなく、家にいられるので、苦労とも何とも思いませんでした。
また退院後、主人は大好きだった、新聞を読むことや、フリーセル(1人用のトランプゲーム)、カラオケなどを全くやらなくなってしまったのですが、数カ月すると、徐々にいろいろとやるようになり、最近はプールの中でウォーキングもするようになりましたので、少しずつ元気になってきたのだと思います。
奥様は腎提供後の体調はいかがですか。
正美さん:
腎提供後も体調は良く、提供前と変わらない生活を送ることができています。むしろ、腎提供によって良くなったことが2つもあります。
1つ目は、もともと胃が弱く、胃薬を飲むことが多かったのですが、腎提供前に検査をしていただき、ピロリ菌を除去してもらったため、胃薬が必要無くなりました。
2つ目は、頭痛持ちだったのですが、腎提供後は、水やお茶を1日2Lは飲むようになったせいか、頭痛が起こらなくなりました。この2つは腎提供したご褒美だと思っています。今後も、主人や家族のためにも元気で居られるように体調管理をしていきたいと思います。
一般的に、ドナーの方は、退院後どのくらいで元の生活に戻れるのでしょうか。
渡邉コーディネーター:
ほとんどの方は、退院後1~2週間で元の生活に戻れると思います。傷の痛みを訴える方がときどきいらっしゃいますが、逆に大事にしすぎて寝込んでしまうと、回復が遅れ、元の生活に戻るまでに数カ月かかることもあります。