腎移植後、移植腎を良好な状態で長期間維持するには、服薬管理や食事管理はもちろんのこと、継続的な運動もとても大切です。
そうはいっても、なかなか身体を動かす習慣はつきにくいのが現状ではないでしょうか。
運動というと身構えてしまう方もいるかもしれませんが、ちょっとした気の持ちようと日常生活の工夫で運動量は上がるものです。そして身体を動かすことを気持ちよく感じるようになることが、さらなる運動やスポーツにつながります。
このシリーズでは、腎移植後の生活に運動を取り入れていく具体的な方法について、聖マリアンナ医科大学病院の丸井祐二先生に解説していただきます。
動画で解説シリーズ11:電車に乗りながら握力トレ
監修
聖マリアンナ医科大学病院 丸井祐二先生
虎の門病院 リハビリテーション部 理学療法士 後藤恭子先生、水野鉄也先生
腎移植後にお勧めの運動としては以下の3つがあります。
1. ストレッチング
2. 筋力トレーニング
3. 有酸素運動
それぞれの運動を動画で解説していきます。
ぜひ、移植後の運動のヒントにしていただき、自分のお気に入りの運動や、毎日の生活に取り入れて続けられる運動を見つけてみてください。
注意点
移植後1年以内の人や、久しぶりに運動を始める人は、主治医に相談の上、行ってください。
特に移植手術後間もない頃は、手術の傷が気にならない程度の動きに留めましょう。また、手術後半年程度は、腹圧が上がり過ぎないように気を付けましょう。
強めの筋力トレーニングは、移植後1年以降に行うようにしてください。
筋トレというと、スポーツクラブでダンベルなどを使うトレーニングをイメージする方もいるかもしれませんが、器具を使わず、自分の体重を使って行うトレーニング(自重トレーニング)も筋トレの1つです。
筋トレを行うと、筋肉が落ちないだけでなく、筋肉の血流を10倍以上に増やしてくれる効果があるので、自重トレーニングだけでも体にとってさまざまなよい効果があります。また、筋トレにより細胞のインスリン感受性が高まるといわれていますので、血糖が気になる人は、食後に行うとより効果的です。
筋力トレーニングは、いつもは使わない筋肉をゆっくり動かすのが効果的です。スクワットであれば、曲げるときも伸ばすときもゆっくりと行うほうが、効率的に筋肉を鍛えることができます。また、ゆっくり大きな呼吸をしながら行うと、心肺機能にもよい効果があります。
筋トレは、継続が大事です。ということは、特別な準備なく、いつでもできる筋トレならよいですよね。そこで、まずは「○○しながら」できる、比較的やさしい筋トレから始めてみましょう。
握力は、全身の筋力の指標だといわれています。サルコペニア※の指標の1つとしての握力は、男性26kg未満、女性18kg未満とされています。そのため、電車に乗っているときなどの時間に、握力を鍛えるようにしてみてはいかがでしょうか。
※サルコペニア:筋肉量が低下し、筋力または身体能力が低下した状態のこと。加齢によるものと不活動・疾患・低栄養によるものがある。
■方法
・100円ショップでも売っているような、握力を鍛える道具を使う場合は、1セット10回を目安に行いましょう。
・ボールなど少し柔らかいものを握る場合は、できるだけ多く(20回以上)行いましょう。
■セット数
・左手と右手それぞれ2セットを、1日に2回(午前と午後など)行うとよいでしょう。
※この動画には音声が含まれています。再生の際にはご注意ください。