腎移植後、移植腎を良好な状態で長期間維持するには、服薬管理や食事管理はもちろんのこと、継続的な運動もとても大切です。
そうはいっても、なかなか身体を動かす習慣はつきにくいのが現状ではないでしょうか。
運動というと身構えてしまう方もいるかもしれませんが、ちょっとした気の持ちようと日常生活の工夫で運動量は上がるものです。そして身体を動かすことを気持ちよく感じるようになることが、さらなる運動やスポーツにつながります。
このシリーズでは、腎移植後の生活に運動を取り入れていく具体的な方法について、聖マリアンナ医科大学病院の丸井祐二先生に解説していただきます。

動画で解説シリーズ15:腹筋その1

<監修>
聖マリアンナ医科大学病院 丸井祐二先生
虎の門病院 リハビリテーション部 理学療法士 後藤恭子先生、水野鉄也先生

丸井先生、後藤先生、水野先生

腎移植後にお勧めの運動としては以下の3つがあります。
1. ストレッチング
2. 筋力トレーニング
3. 有酸素運動

それぞれの運動を動画で解説していきます。
ぜひ、移植後の運動のヒントにしていただき、自分のお気に入りの運動や、毎日の生活に取り入れて続けられる運動を見つけてみてください。

注意点
移植後1年以内の人や、久しぶりに運動を始める人は、主治医に相談の上、行ってください。
特に移植手術後間もない頃は、手術の傷が気にならない程度の動きに留めましょう。また、手術後半年程度は、腹圧が上がり過ぎないように気を付けましょう。
強めの筋力トレーニングは、移植後1年以降に行うようにしてください。

筋トレというと、スポーツクラブでダンベルなどを使うトレーニングをイメージする方もいるかもしれませんが、器具を使わず、自分の体重を使って行うトレーニング(自重トレーニング)も筋トレの1つです。
筋トレを行うと、筋肉が落ちないだけでなく、筋肉の血流を10倍以上に増やしてくれる効果があるので、自重トレーニングだけでも体にとってさまざまなよい効果があります。また、筋トレにより細胞のインスリン感受性が高まるといわれていますので、血糖が気になる人は、食後に行うとより効果的です。
筋力トレーニングは、いつもは使わない筋肉をゆっくり動かすのが効果的です。スクワットであれば、曲げるときも伸ばすときもゆっくりと行うほうが、効率的に筋肉を鍛えることができます。また、ゆっくり大きな呼吸をしながら行うと、心肺機能にもよい効果があります。

「ながらトレーニング」が身についた人や、運動に関心のあるあなたは、もっと筋肉を鍛えて元気だった若い頃の体を取り戻したいと願っているでしょう。その気持ちがあるうちに、ぜひ始めてください。この筋トレのコツは、どこの筋肉を鍛えているかを意識しながら行うことです。鍛える場所を感じて行うことで、脳と筋肉相互の刺激が、双方によい効果をもたらします。

腎移植に至るまで、またはそれ以降に筋力が落ちやすい下肢と、体幹の筋トレを紹介します。

⑮腹筋その1
腹筋運動は傷が十分治った後の、術後3か月以降から行いましょう。それでも少し心配されるでしょうから、下腹部に負担の少ない、弱めの腹筋運動を紹介します。

■方法
・仰向けに寝て、両膝を曲げます。
・足の付け根に両手を置き、息を吐きながら、両手を膝まで滑らせます。
・ゆっくりと10回行いましょう。慣れてきたら20回まで増やしましょう。
■セット数
・10~20回1セットを1日1回、1日おき~毎日行いましょう。


※息を止めないで、腹筋を意識して、ゆっくり行いましょう。
※最初は10回を目標にして、徐々に回数を増やしましょう。
※お尻が上がったり、下がったりしないように心がけましょう。

※この動画には音声が含まれています。再生の際にはご注意ください。