腎移植は少量の免疫抑制薬の継続的服用のみで、健常者と同様な生活が送れる理想的な腎不全の治療です。腎移植を受けると透析と比べさまざまな制約が軽減されます。今回はその1つであるスポーツを取り上げたいと思います。
透析中にスポーツができないというわけではありません。ただ水分管理は困難ですし、血液透析の場合、シャントからの出血があれば命に関わる大出血につながります。透析を受けながら激しいスポーツを行うのは困難です。
腎移植を受けてプロスポーツの選手として活躍した、また活躍中の選手を紹介するシリーズ、第3回目の今回は、現在もドイツブンデスリーガでプレーするイヴァン・クラスニッチ選手です。

3.イヴァン・クラスニッチ

1997年から2013年現在もドイツブンデスリーガでプレーするプロサッカー選手です。2004年(24歳)にはクロアチア代表選手にも選出され国際デビューを果たしました。腎不全(詳細不明)にて2007年(27歳)で腎移植を受けています。母親をドナーとして一回目の腎移植を受けるも早期に腎機能を失い、父親をドナーとして再移植を受け、現役復帰しました。
腎移植後、クロアチア代表選手にも復帰し活躍しました。イングランドプレミアリーグ(ボルトンワンダラーズ)移籍後、2012年からドイツブンデスリーガ(マインツ)でプレーしています。
彼はボスニア生まれのクロアチア人の父親とドイツ人の母親から生まれたハーフです。ドイツで生まれ育ったクラスニッチは2部FCザンクト・パウリ在籍時に活躍が認められドイツの1部リーグであるブンデスリーガの名門クラブ、ヴェルダー・ブレーメンに移籍しました。レギュラーを獲得した後、ゴールとアシストを量産し2005-06シーズンには、ブンデスリーガのアシスト王になっています。
代表選手としては父の母国であるクロアチア代表としてプレーすることを選択しました。2004年2月にドイツ戦でクロアチア代表デビューを飾り、2006年にはクロアチア代表として、ドイツW杯に出場しました。

腎臓病(詳細不明)にて2007年1月下旬、母親をドナーとして腎移植を受けましたが、早期に機能を失い、移植腎は摘出されました。父親をドナーとした再移植は成功し、現役復帰。驚異的な回復で11月にはブンデスリーガのブレーメンに復帰し、得点を決めて多くのファンを感動させました。
2008年3月にはクロアチア代表にも復帰し、EURO(欧州選手権)2008のメンバーにも招集されました(腎移植を経験した選手としては初の欧州選手権出場)。グループリーグ最終戦のポーランド戦で決勝点を上げ、「強い意志があれば何でもできることを示したい。」という名言を残しました。
クロアチア代表監督のビリッチ監督は「彼はわれわれに勇気を与えてくれた。昔の健康な時より高いレベルでピッチに戻ってきてくれた」とのコメントを残しました。2008年夏にフランスの古豪FCナントに移籍。2009年8月、イングランドプレミアリーグ(ボルトンワンダラーズ)に移籍。2012年9月に4年ぶりにドイツブンデスリーガ(マインツ05)へ復帰しています。

イヴァンクラスニッチ

なおサッカーもバスケットボールも接触プレーが多く下腹部にある移植された腎臓への影響(外傷など)が懸念されます。正直私が医師として移植に携わり始めた時は、”移植したらバスケットやサッカーといった接触プレーのあるスポーツはしてはいけない”と教えられました。イヴァン・クラスニッチのブログによると、彼はグラスファイバー製のプロテクター(230ユーロ、約3万円)を使用しているようです。
私も現在移植医として一般的には接触プレーの多いスポーツは勧めてはいませんが、プロテクターをして、また患者さんがリスクを受け入れるなら、問題はないと思っています。なにせこれだけ移植後に活躍したプロスポーツの選手がいるのですから。



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岡山大学病院看護部では4名の移植コーディネーターを配置しております。
移植コーディネーターとは、移植を受けられる患者さまと移植チームの橋渡しをする、移植医療の調整役です。腎移植に関する素朴な疑問や質問など、お気軽にお問い合わせください。いきなり医師に話を聞くのは気が引けるといった方の相談にも応じています。

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