腎移植前後の皆さんが気になる移植後の食事管理について、北里大学病院栄養部 管理栄養士 吉田朋子先生に解説していただき、シリーズでお届けします。
第3回目の今回は、腎移植後の食事の注意点について解説していただきます。

腎移植後の食事の注意点

【アルコール】
大量飲酒は身体には良い影響を及ぼしません。医師より肝機能の低下又は問題があると指摘を受けている患者さんや、糖尿病や脂質異常症、高尿酸血症などがある患者さんは禁酒をお勧めします。適量の飲酒は食欲を増進させ、おつまみなどの摂取が増え塩分及びエネルギー過剰摂取になりやすく、メタボリックシンドロームなどには注意が必要です。またアルコールの利尿作用による脱水や、アルコールを飲んで寝てしまい免疫抑制剤の服用を忘れるということのないように注意しましょう。


【生もの(刺身)】
専門家によっても見解がわかれます。食中毒を予防するためにも、食べる場合には鮮度に注意しましょう。(当院では、移植後3ヶ月程度は刺身などの生ものは無理に食べなくてもよいのではと話をしています。衛生管理の悪い刺身は食べても症状が起こるまでわからないことが多く、移植後3ヶ月までの間をいかに感染症など起こさずに過ごすことができるのかを考えてもらいます。)
特に移植後3ヶ月までは感染症予防のためにも、できるだけ衛生管理がきちんとした食事(調理後できるだけ早めに食べる、時間が経ったものや購入した惣菜などは加熱するなど)を食べるようにしましょう。


【薬物療法による注意すべき食品】
服用している薬により異なりますので、医師や薬剤師に確認しましょう。移植後は免疫抑制剤を服用しますが、一部の免疫抑制剤ではセイヨウオゾギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)やグレープフルーツ(その他かけ合わせの柑橘系)は血中濃度に影響するため避けましょう。


【高血圧】
食塩は6g未満を目標にしましょう。食塩の過剰摂取は血圧管理に影響します。料理の味付けはうす味にし、加工食品などに含まれる塩分にも注意しましょう。

◎食品中に含まれる塩分とは・・・
1.調味料(味つけ) : 塩・しょうゆ・みそ・ソース・マヨネーズ・めんつゆ・だしの素・コンソメなど ⇒具体的な減塩方法
2.加工食品に含まれる塩分 : パン・干物・魚の缶詰・かまぼこ・ちくわ・ハム・チーズ・漬け物など ⇒具体的な減塩方法
3. 食品に含まれるナトリウム


その他:外食や市販料理の塩分 ⇒具体的な減塩方法


【糖尿病】
血糖コントロールを良好にしましょう。間食やアルコールは血糖値に影響しますので、量や頻度には注意しましょう。

【脂質異常症】
動脈硬化性疾患予防には、脂質異常症のみならず、血圧、喫煙、肥満(内臓脂肪型肥満)などの危険因子を包括的に管理することが重要です。適正なエネルギー摂取(体重コントロール)やアルコールを控える及びコレステロールの摂りすぎに注意しましょう。

【高尿酸血症】
高尿酸血症は腎移植後の腎機能や心血管疾患などの危険因子となるため、適正なエネルギー摂取(体重コントロール)やアルコールの常習性飲酒は避けること及びプリン体の摂りすぎに注意しましょう。

【肥満・体重増加】
腎移植後は透析療法の厳しい食事管理から開放されること、体調がよくなり食欲が旺盛になること及び薬物療法(ステロイド)による食欲異常亢進などの原因により体重が増加しやすいと言われています。

【メタボリックシンドローム】
メタボリックシンドロームは心血管系イベントのリスクとなるため、適正なエネルギー摂取(体重コントロール)、塩分の過剰摂取をしない、間食やアルコールなどの量に注意していきましょう。

*体重を減らす必要がある場合

体重を減らす方法

腎移植後3ヶ月までは自己管理の一環として急性拒絶反応に注意しながら、移植前から移植後の食事管理へ切り替えを行い、腎移植後の食事に慣れて頂く時期になります。栄養バランスは、主食(ごはん、パンなど)、主菜(魚、肉、卵、豆、乳など)、副菜(野菜など)を組み合わせるだけでとてもよくなります。料理の味付けはうす味にし、加工食品の塩分に注意しながら、毎日の食事を楽しみたいものです。

栄養のバランス

参考・引用文献:
腎移植後内科・小児科系合併症の診療ガイドライン2011(編集:日本臨床腎移植学会ガイドライン作成委員会)
CKD診療ガイド2012(日本腎臓病学会)