腎移植前後の皆さんが気になる移植後の食事管理について、北里大学病院栄養部 管理栄養士 吉田朋子先生に解説していただき、シリーズでお届けします。
第4回目の今回は、腎移植後の食事管理(腎機能別)について解説していただきます。
腎移植後の食事管理(腎機能別)
● eGFR45以上
移植後の腎機能は安定している時期になります。塩分の過剰摂取は、腎臓へ負担となり、高血圧の原因となります。塩分の過剰摂取は避け、うす味の食事を心がけましょう。体重コントロールも重要です。過体重(BMI 25kg/m2以上)は糖尿病や脂質異常症、高尿酸血症、メタボリックシンドロームなどを引き起こす可能性があります。標準体重を目標にコントロールしましょう。
標準体重(㎏)=身長(m)×身長(m)×22
例)160cmの場合:標準体重=1.6×1.6×22=56.3㎏
BMI=体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)
例)身長160cm、体重70㎏の場合 BMI=70÷1.6÷1.6=27.3kg/m2
たんぱく質は標準体重1㎏あたり1.0g/日を超える量を食べることは、腎機能が安定していても身体へ負担となる可能性があります(厚生労働省が推奨する成人のたんぱく質量は、標準体重1㎏あたり0.9g/日です)。主食、主菜、副菜をバランスよく食べる習慣をつけましょう。
● eGFR30以上45未満
腎機能が低下しないように、食事にも注意したい時期です。塩分は3g以上6g未満を目標とします。体重は標準体重を目標にコントロールをしましょう。たんぱく質は腎臓に負担をかけない量として、CKD診療ガイドでは標準体重1㎏あたり0.8~1.0g/日となっています。eGFR45以上よりさらに注意して、たんぱく質の摂取量が増えないようにしましょう。
● eGFR30未満
腎機能が低下している時期です。塩分は3g以上6g未満を目標とします。むくみがある場合には塩分制限が重要です。たんぱく質は標準体重1㎏あたり0.6~0.8g/日の低たんぱく食とします。体重は標準体重を目標とします。低たんぱく食を行っている場合には、エネルギー不足にならないように、炭水化物や脂質からのエネルギー補給が必要となります。カリウムやリンなどは検査結果をみて、食事のカリウムやリンの制限を行いましょう。腎臓病疾患用にたんぱく質を少なくした低たんぱくごはんや低たんぱくパン、少量で高エネルギー、たんぱく質やカリウムやリンや塩分を控えた菓子類、低たんぱく食の宅配食もたくさんの種類がありますので、利用するのもよいでしょう。
【カリウム制限が必要な場合はこちら】
【リン制限が必要な場合はこちら】
*小児は成長を考慮する必要があるため、食事量については主治医に確認しましょう。
参考・引用文献:
腎移植後内科・小児科系合併症の診療ガイドライン2011(編集:日本臨床腎移植学会ガイドライン作成委員会)
CKD診療ガイド2012(日本腎臓病学会)