腎移植前後の皆さんが気になる移植後の食事管理について、北里大学病院栄養部 管理栄養士 吉田朋子先生に解説していただき、シリーズでお届けします。
最終回は腎移植前後の食事管理のまとめについてお届します。

腎移植前後の食事管理【まとめ】

移植前の栄養管理(成人)

*ガイドラインを参考にした栄養管理を示しています。基本的には、主治医にご自分の栄養管理について指示を確認しましょう。

*小児は成長を考慮する必要があるため、主治医に指示を確認しましょう。

移植前
保存期:eGFR6)60以上
(CKDステージG1~G2)
保存期:eGFR6)30以上60未満
(CKDステージG3a~G3b)
保存期:eGFR6)30未満
(CKDステージG4~G5)
血液透析 腹膜透析
エネルギー
(kcal/kg*1)/日)
- 25~35kcal/kg/日*2) 27~39kcal/kg/日*3) 30~35kcal/kg/日*4)
たんぱく質
(g/kg*1)/日)
過剰にならないようにする 0.8~1.0g/kg/日*5) 0.6~0.8g/kg/日 1.0~1.2g/kg/日 0.9~1.2g/kg/日
食塩(g/日) 高血圧があれば減塩3g以上6g/日未満 3g以上6g未満 6g未満 尿量(L)×5+PD除水(L)×7.5*7)
水分 - できるだけ少なく
(15mL/ドライウエイトkg/日以下)
尿量+除水量
カリウム - 高カリウム血症がある場合にはカリウム制限 2000mg以下 制限なし(高カリウム血症の場合にはカリウム制限)
リン - たんぱく質(g)×15以下 たんぱく質(g)×15以下

参考文献:
CKD診療ガイド2012(日本腎臓学会)
慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版(日本腎臓学会)
2009年版「腹膜透析ガイドライン」(日本透析医学会)
*1)標準体重(㎏)=身長(m)×身長(m)×22
*2)エネルギー必要量は年齢、性別、身体活動により概ね25~35kcal/kg/日が推奨される。
摂取エネルギー量の決定後は、体重の変化を観察しながら適正エネルギー量になっているかを経時的に評価しつつ調整を加える。
*3)厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2010年版)」と同一とする。
性別、年齢、身体活動レベルにより推定エネルギー必要量は異なる。
*4)年齢、性別、身体活動レベルを参考にして個別に設定する。総エネルギー量から腹膜吸収エネルギー量を減じる。
*5)厚生労働省の日本人の食事摂取基準2010年によると、日本人のたんぱく質推奨量は0.9g/kg/日である。
*6)eGFR(mL/分/1.73m2)=194×血清クレアチニン‐1.094×年齢‐0.287(女性は×0.739)
18歳以上に適用する
*7)2009年版の「腹膜透析ガイドライン」では、食塩摂取量は個々の尿量、除水量を勘案して行うことが必要である。


移植後の栄養管理(成人)

*ガイドラインを参考に北里大学病院での栄養管理を示しています。基本的には、主治医にご自分の栄養管理について指示を確認しましょう。

*小児は成長を考慮する必要があるため、主治医に指示を確認しましょう。

移植後
~3ヶ月まで eGFR3)45以上 eGFR3)30以上45未満 eGFR3)30未満
エネルギー
(kcal/kg*1)/日)
25~35kcal/kg/日*2)
たんぱく質
(g/kg*1)/日)
eGFR3)30以上:0.8~1.0g/kg/日4)
eGFR3)30未満:0.6~0.8g/kg/日
0.8~1.0g/kg/日*4) 0.6~0.8g/kg/日
食塩(g/日) 食塩3g以上6g未満
水分 医師に指示された水分量(一般的には1000~2000mL目標)
カリウム 高カリウム血症がある場合にはカリウム制限
アルコール 適量までとする(糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・肝機能障害などがある場合には禁酒)
生もの(刺身) 無理にこの時期に食べなくてもよいと思われるが、食べる場合には鮮度のよいものを選ぶ 鮮度のよいものを選ぶ
薬物療法による注意すべき食品 免疫抑制剤や降圧剤の一部でグレープフルーツ(その他かけ合わせの柑橘系)やセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)は摂取しない
高血圧がある場合の食事管理 ①減塩②適正な摂取エネルギー(適正体重の維持)
糖尿病がある場合の食事管理 ①バランスのよい食事を規則正しい時間に食べる②適正な摂取エネルギー③間食や飲酒を控える④炭水化物量を適量にする
脂質異常症がある場合の食事管理 ①バランスのよい食事を規則正しい時間に食べる②適正な摂取エネルギー③間食や飲酒を控える④コレステロール制限⑤食物繊維をしっかりとる
高尿酸血症がある場合の食事管理 ①バランスのよい食事を規則正しい時間に食べる②適正な摂取エネルギー③間食や飲酒を控える④プリン体制限⑤十分な水分摂取
肥満(BMI>25)がある場合の食事管理 ①バランスのよい食事を規則正しい時間に食べる②適正な摂取エネルギー③間食や飲酒を控える
メタボリックシンドロームがある場合の食事管理 ①バランスのよい食事を規則正しい時間に食べる②適正な摂取エネルギー③間食や飲酒を控える④脂肪エネルギー比率は25%を超えない

参考文献:
腎移植後内科・小児科系合併症の診療ガイドライン2011(日本臨床腎移植学会)
CKD診療ガイド2012(日本腎臓学会)
*1)標準体重(㎏)=身長(m)×身長(m)×22
*2)エネルギー必要量は年齢、性別、身体活動により概ね25~35kcal/kg/日が推奨される。
摂取エネルギー量の決定後は、体重の変化を観察しながら適正エネルギー量になっているかを経時的に評価しつつ調整を加える。
*3)eGFR(mL/分/1.73m2)=194×血清クレアチニン‐1.094×年齢0.287(女性は×0.739)
18歳以上に適用する
*4)厚生労働省の日本人の食事摂取基準2010年によると、日本人のたんぱく質推奨量は0.9g/kg/日である。