母と社会への恩返し
移植手術を終えた時のことを覚えていますか。
原さん:
目が覚めると集中治療室でした。母のことが心配でしたが、看護師さんから、「お母様も大丈夫ですよ」とお聞きし、安心したのを覚えています。
手術後の経過はどうでしたか。
原さん:
実は、術後すぐは右側の腰から足先までの感覚が無く動かなかったので、とても心配でした。先生からは、「一時的なものだと思うので、大丈夫ですよ」と言われたので、たくさん歩いたり動いたりしたほうが良いと思い、一般病棟に戻ってからは頑張って歩き、退院する頃には、つかまらなくても歩けるようになりました。退院後2~3カ月は引き続き感覚が無かったのですが、脚は普通に動きましたし、現在は感覚も戻り、全く問題ありません。
山永先生:
原因は分かりませんが、手術の際に神経などが少し圧迫されていたのかもしれません。あまり経験しないケースです。
お母様は術後つらかったことはありますか。
お母様:
何もありません。退院後は自宅近くの病院を紹介していただき、その病院でひたすら院内を歩き、足腰が弱らないようにしました。それ以降も特に問題は無く、元気一杯です(笑)。
原さんも退院後は順調ですか。
原さん:
手術後しばらくは傷の違和感がありましたが、今は気にならなくなりましたし、移植前のだるさもなくなり、体調がとても良くなりました。
退院後、どのようなことに気を付けて生活していますか。
原さん:
現在母とは同居していますので、母の食事管理には特に気を付けており、家族全員のことを考え、栄養バランスを考えた野菜中心のメニューにしています。また、私自身は薬を飲み忘れることが無いように気を付けています。
お母様:
一人暮らしをしていた頃は、おかずは作らず、ご飯でお腹を一杯にするようなことがあり、体重が減ってしまうことがありましたが、現在は娘が食事を管理してくれるようになりましたので、体重の増減が無くなり、安定するようになりました。また、市のスポーツジムに週2回通い、2時間ほど運動もしているので、体の調子がとても良いです。
移植をしてから一番良かったこと、うれしかったことはどのようなことですか。
原さん:
太い血液透析の針を刺さなくてよくなったことです。私自身も嫌でしたし、刺す方も本当に苦労されていましたので。
また、仕事に就くことができたこともうれしかったです。移植後1年くらいたった頃、自宅の近くに市立図書館ができたのですが、「私はここで働くんだ!」と何か運命的なものを感じ、早速応募して採用され、司書補助として働けるようになりました。移植前は、仕事をしたくてもできなかったので、本当にうれしいです。
お母様は、移植後うれしかったことはどのようなことですか。
お母様:
やはり娘が透析の必要が無くなり、喜んでくれたことです。
現在の通院頻度はどのくらいですか。
原さん:
6週間に1回くらいです。母は1年に1回、私と一緒に受診しています。
山永先生:
腎移植後のフォローアップ外来の頻度は、患者さんの状態によっても異なりますが、1~1カ月半くらいに1回の方が多いです。腎機能が落ち着いていて合併症がなく、他県など遠方にお住まいの方の中には、3カ月に1回くらいの方もいらっしゃいます。
ドナーは合併症の無い方は、1年に1回、定期検査をしています。胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)も行っているので、その検査で早期胃がんが見つかった方もいらっしゃいます。遠方にお住まいのドナーの方は地元の病院と連携を取って診てもらっています。